「学校では友達とトラブルになることが多いんです」
「でも、放課後等デイサービスでは、友達と一緒に遊べていますよ」
同じ子どもについて話しているのに、学校と放課後等デイサービスで伝えられる姿が違う。
そんなことがあります。
どちらの話が正しいのでしょうか。
私は、どちらか一方が正しいということではないと思っています。
子どもは、過ごす場所や関わる相手、活動の内容などによって、見せる姿が変わることがあります。
学校で難しいことが放デイではできることもあれば、その反対もあります。
大切なのは、「どこでできたか」だけではなく、「どのような条件でできたのか」を考えることです。
今回は、特別支援学校の教員として、また児童発達支援・放課後等デイサービスや保育所等訪問支援に関わる立場として、私が大切にしている視点をお伝えします。
1.子どもの力は、環境によって現れ方が変わる
子どもが何かをできるかどうかは、本人の発達や身につけている力だけで決まるわけではありません。
例えば、次のような条件も関係します。
- 周囲に何人の子どもがいるか
- どのような友達や先生と関わっているか
- 何を求められているか
- 活動の内容や難しさが合っているか
- 一日の中で、どのくらい疲れているか
学校では大人数の活動に参加することが求められます。
一方、放課後等デイサービスでは、少人数での活動や、個々の子どもの発達に合わせた活動を設定できる場合があります。
こうした条件の違いによって、子どもが発揮できる力も変わる可能性があります。
ただし、学校は難しく、放デイなら簡単だという意味ではありません。
学校には学校の学びや役割があり、放デイにも異なる役割があります。
それぞれの環境にある条件を丁寧に見ていくことが必要です。
家庭と園・学校での姿の違いについては、園・学校では頑張れるのに、家で崩れるのはなぜ?で詳しく解説しています。
2.「友達とうまく関われない子」と決めつけない
私は、学校では友達とのトラブルが目立つ子どもが、放課後等デイサービスの少人数の活動では、言葉で気持ちを伝えたり、順番を守ってやり取りしたりする姿を見ることがあります。
もちろん、放デイならいつでもうまくできるということではありません。
同じ放デイの中でも、できるときと難しいときがあります。
その違いを考えてみると、子どもの理解が深まることがあります。
例えば、友達の人数が少ないこと。
活動の流れが分かりやすいこと。
関わる大人が近くにいて、必要なときに言葉を補ってくれること。
そうした条件が、子どもにとって取り組みやすい環境になっている可能性があります。
だから私は、「この子は友達とうまく関われない」と決めつけるよりも、
「どのような場面なら友達とうまく関われるのか」
を考えたいと思っています。
3.学校と放デイで比較したい5つの条件
学校と放デイの様子が違うとき、私は次のような条件を整理することが大切だと考えています。
① 人数と集団の大きさ
大人数では周囲の情報が多く、何をすればよいか判断することが難しくなる場合があります。
少人数では、友達の動きや大人の説明を理解しやすくなる子もいます。
② 活動の内容と難しさ
同じ「友達と遊ぶ」という活動でも、ルールの複雑さや必要な力が違います。
自分が理解しやすい活動では、友達と関わりやすくなるかもしれません。
③ 大人の関わり方
言葉による説明、見本、視覚的な手がかりなど、支援方法によって活動への取り組みやすさが変わることがあります。
どのような援助があったかまで確認することが大切です。
④ 友達との関係
相手によって、安心して話せたり、言葉が出にくくなったりすることがあります。
誰となら関わりやすいのかも、支援を考えるための情報になります。
⑤ その日の状態と活動の時間帯
疲労や体調、一日の中での経験によって、行動の現れ方が変わる場合があります。
例えば、朝と夕方では本人の余裕が違うかもしれません。
ただし、声が大きいから疲れている、といった単純な判断はしません。
普段の様子との違いを観察し、複数の可能性を考えます。
4.「放デイではできています」だけでは、学校への支援につながりにくい
学校の先生に「放デイではできていますよ」と伝えることがあります。
しかし、その言葉だけでは、学校の先生も何を参考にすればよいのか分からないかもしれません。
私が大切にしたいのは、できたという結果だけではなく、そのときの条件を伝えることです。
例えば、次のような伝え方が考えられます。
「少人数の活動で、使う道具が目の前に用意されていると、自分から取り組み始める姿が見られます」
「友達に伝える言葉を事前に確認した場面では、その言葉を使おうとする姿がありました」
これらは説明用の例であり、特定の子どもの実際の記録ではありません。
このように、どのような支援や環境で力を発揮できたのかを共有することで、学校でも試せそうなことを一緒に考えやすくなります。
ただし、放デイと学校では人数や時間、活動の目的などが異なります。
放デイの支援方法をそのまま学校へ持ち込むのではなく、学校の状況に合う方法へ調整することが必要です。
5.学校と福祉のどちらが優れているかではない
私は、教員として働いていた頃と、福祉の立場から子どもに関わるようになってからでは、子どもの見方が広がったと感じています。
学校にいた頃は、学校で見えている姿を中心に考えることが多くありました。
一方、放課後等デイサービスや保育所等訪問支援に関わる中で、学校以外の場面で子どもが見せる姿の重要性を強く感じるようになりました。
だからといって、学校の支援が悪いとか、福祉の方が優れているということではありません。
学校にも、放デイにも、それぞれの役割と難しさがあります。
子どもが力を発揮できた場面を共有するときには、お互いの立場を尊重することが大切です。
「なぜ学校ではできないのか」ではなく、「放デイでできたときには、どんな条件が整っていたのか」
そうした問いから考えることで、新しい支援の方法が見つかるかもしれません。
6.連携で共有したいのは、困りごとだけではない
学校と放デイが連携するとき、困っていることやトラブルの報告が中心になることがあります。
しかし、私は、うまくいっていることも同じくらい重要だと考えています。
例えば、
- 子どもが好きな活動
- 自分から取り組めた場面
- 友達とやり取りできたときの条件
- 有効だった声かけや環境調整
- 最近できるようになったこと
- 子ども本人がどうしたいと考えているか
こうした情報も持ち寄ります。
そのうえで、学校では何に取り組むか、放デイではどのような経験を積むか、家庭では何を大切にするかを考えます。
すべての場所で同じことをしなければならないわけではありません。
それぞれの役割に合わせて、子どもの成長につながる取り組みを考えることが大切です。
なお、情報共有では、本人・保護者の意向や各機関の個人情報の取扱いに配慮します。
7.明日からできること|「できた条件」を一つ共有してみる
学校と福祉の連携というと、大きな会議や書類の作成を想像するかもしれません。
しかし、最初からすべてを変える必要はないと思っています。
例えば、今日の活動の中で、子どもがうまく取り組めた場面を一つ見つけます。
そして、
「何をしていたか」
「どのような環境だったか」
「大人は何をしたか」
「子どもはどのように反応したか」
を整理してみます。
その内容を、必要に応じて学校や家庭と共有する。
まずはそのような小さな取り組みから始められます。
「できた条件」を記録して共有する際は、児童発達支援の支援記録|事実と解釈を分ける書き方も参考にしてください。
まとめ|子どもの姿の違いは、支援のヒントになる
学校では難しいことが、放課後等デイサービスではできる。
そのような違いが見られたとき、どちらが正しいのか、どちらの支援がよいのかを決める必要はありません。
大切なのは、なぜその違いが生まれているのかを考えることです。
どのような場面で、どのような支援があり、どのような条件で力を発揮できたのか。
その情報を持ち寄ることで、子どもの見方が変わり、次の支援の方法が見えてくることがあります。
学校でも、放デイでも、家庭でも、その子が持っている力を発揮できる場面を増やしていく。
私は、そうしたことを大切にしながら、教育と福祉の連携を考えていきたいと思っています。
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記事の位置づけ
この記事は、ゆうた先生が過去に語った教育と福祉の連携に関する支援観を基に編集しています。具体的な説明例は、特定の利用児童や学校の実際の事例を再現したものではありません。

