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ゆうた先生
元特別支援学校教諭/株式会社THE SHIP代表
東京学芸大学大学院 教育学研究科 特別支援教育専攻修了。

特別支援教育・発達支援の現場で、子ども一人ひとりの発達段階や特性に合わせた支援に取り組んできました。

現在は、山梨県で児童発達支援・放課後等デイサービス「SHIP」を運営しています。

子どもを「できない子」として見るのではなく、「これから学び、できることを身につけていく子」として捉え、その子にとって今ちょうどいい関わり方を考えることを大切にしています。

ABA、行動理解、視覚支援、環境調整、保護者支援などを、現場や家庭で使える形にして発信しています。
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目的を理解すれば動けるのか――「やる気は、やった後から育つことがある」という支援の視点

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ゆうた先生

こんにちは♪ゆうた先生です

子どもがなかなか活動を始められないとき、

「何のためにやるのか、分かっていないのかな」
「必要性を丁寧に説明すれば、動けるかもしれない」
「もう少し、やる気を持ってほしいな」

と思うことがあります。

もちろん、子どもに活動の目的や見通しを伝えることは大切です。

何をするのか。
どこまで取り組むのか。
終わった後はどうなるのか。

こうしたことが分かるだけで、安心して取り組める子もいます。

ただ、目的を理解できれば、すべての子どもが動き出せるのでしょうか。

実際の支援では、

「やる意味は分かっているけれど、なかなか始められない」

という子もいます。

反対に、最初はあまり乗り気ではなかったけれど、少しやってみたことで、

「思っていたより楽しかった」
「これならできそう」
「もう一回やってみたい」

と気持ちが変わる子もいます。

今回は、行動とやる気の関係について考えながら、子どもが最初の一歩を踏み出すために、支援者ができることを整理していきます。

目次

行動した後に、目的や意味が見えてくることがある

脳科学者の茂木健一郎さんは、行動と目的の関係について、次のような趣旨の話をされています。

最初に明確な目的があり、その目的に向かって行動するとは限らない。

先に何かを始め、行動しているうちに、

「そういえば、自分はどうしてこれをしているのだろう」

と振り返ることで、後から自分なりの目的や意味が見えてくることがある、という考え方です。

また、著書『結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方』でも、あれこれ考え続けて動けなくなるより、まず行動に移すことの大切さが述べられています。

これは、「目的を考えなくてよい」ということではありません。

まだ経験していないことについて、

「なぜやりたいのか」
「どんな意味があるのか」

と聞かれても、本人にもよく分からないことがあります。

実際に少しやってみた後で、

「自分は、こういうことが好きなのかもしれない」
「この方法なら取り組めそう」
「思っていたより嫌ではなかった」

と分かることもあります。

この考え方は、子どもの支援を考えるときにも、とても興味深い視点だと思います。

1.子どもは、目的が分かれば動けるとは限らない

子どもが活動に取り組まないとき、私たちはつい、

「何のためにやるのか分かっている?」
「できるようになりたいと思わない?」
「これができないと、後で困るよ」

と、活動の意味や必要性を説明しようとすることがあります。

子どものためを思って、丁寧に説明しているのだと思います。

ただ、子どもが動けない理由は、目的を理解していないからとは限りません。

例えば、

  • 何をすればよいのか分からない
  • どこから始めればよいのか分からない
  • 最後までできる自信がない
  • 以前に失敗した経験がある
  • 課題の量が多く見える
  • 終わりが見えない
  • 書くことへの負担が大きい
  • 話を聞き続けることが難しい
  • 周囲の音や人の動きが気になる
  • 疲れや不安が強い
  • 説明された内容を整理することが難しい

といったことが影響しているかもしれません。

このような状態の子に、さらに目的や理由を考えてもらおうとしても、最初の一歩にはつながりにくいことがあります。

「やる意味が分からない」というよりも、

今の課題や環境では、始めることが難しい

のかもしれません。

子どもが動けないときには、やる気を評価する前に、

「どうしたら、この子は始められるだろう」

と考えてみることが大切です。

2.最初の行動を、小さく具体的にする

例えば、プリントに取り組めない子に、

「全部終わらせよう」

と伝えると、プリント全体の量を見ただけで、難しさを感じてしまうことがあります。

そのようなときは、最初の行動を小さくします。

例えば、

  • まず名前だけ書く
  • 最初の1問を先生と一緒に行う
  • 3分間だけ取り組む
  • 書く代わりに指差しで答える
  • 5問の中から2問を選ぶ
  • 大人が問題を読み、子どもが答える
  • 道具を準備するところまで行う
  • まずは活動を見るだけにする

といった方法があります。

大切なのは、最終的な目標を下げることではありません。

目標までの最初の一歩を、今の子どもが始められる大きさにすることです。

全部は難しくても、1問ならできるかもしれません。

10分間は難しくても、1分間なら取り組めるかもしれません。

一人では難しくても、最初だけ先生と一緒なら始められるかもしれません。

実際に少し取り組めると、

「これならできるかもしれない」
「先生と一緒なら大丈夫かもしれない」
「次も少しやってみようかな」

という気持ちが生まれることがあります。

最初からやる気を求めるのではなく、できた経験から、次のやる気が育つこともあるのです。

3.「できた経験」が、次の行動につながる

子どもが次の行動へ向かうためには、活動の目的を理解することだけでなく、

「自分にもできそう」

と感じられることが大切です。

例えば、

  • 最初だけ大人と一緒に行う
  • 見える課題の量を減らす
  • 書く以外の方法で答えられるようにする
  • 完成した見本を見せる
  • 得意な部分から始める

といった工夫によって、取り組めることがあります。

その中で、

「少しできた」
「手伝ってもらえばできた」
「思っていたより大丈夫だった」

という経験が生まれます。

こうした経験は、次の活動へ向かうための大切な土台になります。

動機づけに関する自己決定理論では、人が主体的に取り組むためには、

  • 自分で選んでいるという感覚
  • 自分にもできるという感覚
  • 安心できる人とのつながり

が大切だとされています。

つまり、

「やる気があるから、できる」

という流れだけではありません。

できる形に調整され、実際に少しできたことで、次の意欲が育つ

という流れもあります。

4.行動した後に、一緒に振り返る

子どもが行動できたら、それで終わりではありません。

その後に、

「何が取り組みやすかったのか」
「どこから難しくなったのか」

を一緒に振り返ります。

言葉で振り返ることができる子には、

「やってみて、どうだった?」
「どこがやりやすかった?」
「難しかったところはあった?」
「次も同じやり方がよさそう?」
「変えた方がよいところはある?」

と聞いてみます。

ただし、子どもが自分の気持ちや理由を、すぐに言葉にできるとは限りません。

その場合は、何度も答えを求めるのではなく、支援者が観察したことを伝えてみます。

「先生と一緒に始めたら、取り組めたね」
「1問ずつ見せたら、よく見ていたね」
「書くよりも、指で選ぶ方が答えやすそうだったね」
「終わりが分かってから、身体の力が少し抜けていたね」

ここで大切なのは、子どもの気持ちを決めつけないことです。

例えば、

「楽しかったんだね」

と断定するのではなく、

「笑顔が見られたね」
「もう一回やろうとしていたね」
「この方法では、席に座って取り組めていたね」

と、まずは実際に見られた姿を確認します。

行動したときの様子を振り返ることで、

  • 何に興味があるのか
  • 何が得意なのか
  • どのような援助があればできるのか
  • どこで負担が大きくなるのか
  • どのくらいなら挑戦できるのか
  • どのような環境なら安心できるのか
  • 本人は何を選びたいのか

が、子どもにも支援者にも少しずつ分かってきます。

最初から子どもに「やりたい理由」を説明してもらうのではなく、実際の経験を通して、その子にとっての意味を一緒に見つけていきます。

5.「やる気がない」ではなく、「始められる条件」を探す

子どもが動かないときに、

「やる気がない」
「気持ちの問題だ」
「本人が必要性を感じていない」

と考えてしまうと、支援の選択肢が少なくなってしまいます。

一方で、

「どうすれば、この子は始められるだろう」

と考えると、試せることが増えていきます。

例えば、

  • 課題の量を減らして見せる
  • 始まりと終わりを視覚的に示す
  • 最初だけ一緒に行う
  • 興味のあるものから始める
  • 二つの選択肢から選んでもらう
  • 静かな場所へ移動する
  • 途中に休憩を入れる
  • 書く以外の回答方法を用意する
  • 完成した見本を見せる
  • 支援者が最初にやって見せる
  • 取り組む時間帯を変える

といった方法があります。

選択肢を用意するときも、何でも自由にしてもらえばよいわけではありません。

例えば、

「鉛筆で書くのと、指で選ぶのはどちらがよい?」
「先生と一緒にする?最初だけ一人でやってみる?」
「こちらとこちら、どちらから始める?」

など、子どもが理解でき、実際の行動につながる選択肢を用意します。

子どもが動けないときに見るべきなのは、本人の意欲だけではありません。

子どもの力と、課題、環境、大人の関わり方との組み合わせを見ていくことが大切です。

6.「やってみたら楽しかった」という経験をつくる

子どもは、活動を始める前から、その活動の楽しさや意味を理解しているとは限りません。

例えば、集団活動に入りたがらない子がいたとします。

その子に、

「みんなやっているから入ろう」
「やってみれば楽しいよ」

と伝えても、不安が強い状態では、なかなか動けないことがあります。

そのようなときは、

  • 先生と一緒に端から見る
  • 好きな道具を渡す役だけ行う
  • 最初の1分だけ参加する
  • 得意な場面から入る
  • 途中で休めることを伝える
  • まずは大人と一緒に行う

といった入り口をつくります。

実際に少し経験することで、

「思っていたより大丈夫だった」
「少し楽しかった」
「次もやってみようかな」

という気持ちが生まれることがあります。

活動の意味や楽しさは、説明だけで伝わるものではありません。

実際にやってみることで、初めて分かることがあります。

だからこそ、支援者は子どもを無理に活動へ入れるのではなく、安心して試せる入り口をつくることが大切です。

7.うまくいかなかった経験も、支援を考える材料になる

行動した結果、うまくいかなかったとしても、それは単なる失敗ではありません。

例えば、

  • 3分間でも長かった
  • 人が多い場所では集中しにくかった
  • 説明が長いと分からなくなった
  • 選択肢が多すぎて迷った
  • 一人で始めるのは難しかった
  • 疲れている時間帯だった
  • 書くことへの負担が大きかった
  • 終わりが見えないことが不安だった

ということが分かるかもしれません。

行動したからこそ、分かることがあります。

「できなかった」で終わるのではなく、

「どの条件を変えれば、次は取り組みやすくなるだろう」

と考えます。

例えば、3分間でも難しかったのであれば、

「次は1分から始めてみよう」
「時間ではなく、1問だけにしよう」
「始める前に終わりを見せよう」
「今日は見るだけにしよう」

と、支援を調整できます。

ここで行っているのは、子どもを評価することではありません。

今の支援方法を評価し、次の方法へ調整することです。

行動と振り返りを繰り返すことで、その子に合った支援が少しずつ見えてきます。

8.大人の働き方にも同じことが言える

この考え方は、支援者自身の働き方にも共通すると思います。

例えば、

「完璧な活動を考えてから準備しよう」
「連絡帳の正しい書き方が分かってから書こう」
「十分に知識を身につけてから、支援を変えよう」

と考えていると、なかなか最初の一歩を踏み出せないことがあります。

もちろん、子どもの安全、権利、健康に関わることは、事前に十分な確認が必要です。

その一方で、日常の支援改善については、小さな行動から始められます。

  • 一人の子に、一つの支援だけ試す
  • 今日の連絡帳で、一文だけ変える
  • 活動後に、気づきを一つ記録する
  • 先輩職員の声かけを一つ取り入れる
  • 5分だけ教材を準備する
  • 子どもが始めやすかった条件を一つ共有する

実際に試した後で、

「この声かけは伝わりやすかった」
「この見せ方なら始められた」
「この子には、最初に一緒に行うことが必要だった」
「自分は、こういう支援を大切にしたかったのかもしれない」

と分かることがあります。

支援の意味や、自分が大切にしたい働き方は、考えるだけで完成するものではありません。

実践し、振り返る中で、少しずつ形になっていきます。

ケースで考えてみる

Before

職員

「どうしてやらないの?」
「これができるようになるために必要だよ」
「何のためにやるのか考えてみよう」

子どもの様子

課題を見ない。
机から離れる。
拒否が強くなる。

職員は、子どものためを思って、活動の必要性を説明しようとしています。

ただ、この子が始められない理由は、目的を理解していないことではないかもしれません。

課題の量、書くことの負担、終わりの分かりにくさ、失敗への不安などが影響している可能性があります。

After

職員

「今日は、この1問だけ先生と一緒にやってみよう」
「鉛筆で書くのと、指で選ぶのはどちらがいい?」
「終わったら、ブロックをしよう」

子どもの様子

指で答える方法を選び、1問に取り組む。

職員

「指で選ぶ方法なら始められたね。次もこの方法を試してみよう」

この支援で大切なのは、子どもを説得できたことではありません。

子どもが実際に始められる条件を見つけたことです。

「まず行動」は、無理にやらせることではない

ここで気をつけたいのは、「行動が先」という考え方を、

「嫌がっていても、まずやらせればよい」

と捉えないことです。

子どもにとって負担が大きすぎる活動を無理に経験させると、

「やっぱり難しかった」
「また失敗した」
「次はもっとやりたくない」

という経験になってしまうことがあります。

支援で大切なのは、行動させることではありません。

子どもが安心して試せる行動を、一緒につくることです。

そのためには、本人の言葉だけでなく、表情、視線、姿勢、身体の動き、選択、行動の変化などを確認しながら、

  • 難易度は適切か
  • 課題の量は多すぎないか
  • 必要な援助があるか
  • 本人が選べる部分があるか
  • 途中で休めるか
  • 終わりが分かるか
  • 不安や感覚的な負担が強くないか
  • 本人が拒否や中止を伝えられるか

を考える必要があります。

小さな一歩は、大人が一方的に決めるものではありません。

子どもの反応を見ながら、一緒に調整していくものです。

今日のワンポイント

目的や動機があるから、行動できるとは限りません。

小さく行動してみることで、

「できそう」
「少し楽しい」
「もう一度やってみたい」
「この方法なら取り組める」

という気持ちが、後から育つことがあります。

支援者の役割は、子どもに「何のためにやるのか」を説明させることだけではありません。

子どもが安心して試せる小さな一歩をつくり、その経験を一緒に振り返ることです。

子どもが活動を始められないとき、

「なぜやらないの?」

と尋ねる前に、

「最初の一歩を、今の半分にできないか」

と考えてみましょう。

まとめ

子どもが動けないとき、目的や必要性を繰り返し説明するだけでは、行動につながらないことがあります。

そのときに必要なのは、子どものやる気を評価することではありません。

  • 始められる大きさになっているか
  • 何をすればよいか分かるか
  • 終わりが見えるか
  • 必要な援助があるか
  • 選べる部分があるか
  • 安心して試せるか
  • 本人の反応を振り返れているか

を確認することです。

最初から、大きな変化を求める必要はありません。

1問だけ。
1分だけ。
最初だけ一緒に。
まずは見るところから。

その小さな経験を一緒に振り返ることで、子どもに合った支援や、次の一歩が少しずつ見えてきます。

やる気があるから、行動できる。

それだけではなく、

安心して行動できた経験から、やる気が育つこともある。

その両方の可能性を持ちながら、子どもの行動を見ていきたいと思います。

参考文献・参考資料

  • 茂木健一郎(2015)『結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方』学研パブリッシング。
  • Ryan, R. M., & Deci, E. L.(2000)Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
  • Bureau, J. S., Howard, J. L., Chong, J. X. Y., & Guay, F.(2022)Pathways to student motivation: A meta-analysis of antecedents of autonomous and controlled motivations. Review of Educational Research, 92(1), 46–72.
  • Howard, J. L., Bureau, J. S., Guay, F., Chong, J. X. Y., & Ryan, R. M.(2021)Student motivation and associated outcomes: A meta-analysis from self-determination theory. Perspectives on Psychological Science, 16(6), 1300–1323.
  • Patall, E. A., Cooper, H., & Robinson, J. C.(2008)The effects of choice on intrinsic motivation and related outcomes: A meta-analysis of research findings. Psychological Bulletin, 134(2), 270–300.
  • Webb, T. L., & Sheeran, P.(2008)Mechanisms of implementation intention effects: The role of goal intentions, self-efficacy, and accessibility of plan components. British Journal of Social Psychology, 47(3), 373–395.

※これらの研究は、「先に行動させれば、必ずやる気が生まれる」と示したものではありません。自分で選べること、できそうだと感じられること、支援者との安心できる関係、具体的で取り組みやすい課題などが、動機づけや行動参加と関係することを示した研究を、日常の支援に置き換えて整理しています。

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この記事を書いた人

ゆうた先生のアバター ゆうた先生 株式会社THE SHIP代表取締役/元特別支援学校教諭

株式会社THE SHIP代表取締役。東京学芸大学大学院教育学研究科特別支援教育専攻修了。元特別支援学校教諭。現在は山梨県で、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援を運営しています。子どもの行動の背景を丁寧に捉え、家庭や支援現場で実践できる発達支援・特別支援教育の情報を発信しています。

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