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ゆうた先生
元特別支援学校教諭/株式会社THE SHIP代表
東京学芸大学大学院 教育学研究科 特別支援教育専攻修了。

特別支援教育・発達支援の現場で、子ども一人ひとりの発達段階や特性に合わせた支援に取り組んできました。

現在は、山梨県で児童発達支援・放課後等デイサービス「SHIP」を運営しています。

子どもを「できない子」として見るのではなく、「これから学び、できることを身につけていく子」として捉え、その子にとって今ちょうどいい関わり方を考えることを大切にしています。

ABA、行動理解、視覚支援、環境調整、保護者支援などを、現場や家庭で使える形にして発信しています。
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知的発達症(知的障害)とは?|知的機能と適応機能から考える

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3分で基礎が分かる|発達支援・特別支援教育 基礎知識辞典 第5回

毎日の支度や着替え、荷物の整理など、生活の中で身につき、自分から使えるようになった力があります。私は、その子が今発揮している力や、その子らしさから理解を始めたいと考えています。

この記事の要点

  • 検査結果は重要な参考情報。知的機能と適応機能、日常生活で発揮される力を合わせて見ます。
  • 「今、一人ではできない」と「将来もできない」は別。必要十分な支援から、自分でできる部分を少しずつ増やします。
  • 診断名や検査結果はその子の一部。その子の強みや人間性まで含めて見ます。

医学・教育に関する一般情報には出典を付けています。「私」として述べる経験・支援観は、ゆうた先生本人への取材に基づきます。個々の経験を、知的発達症のあるすべての子どもに当てはめるものではありません。

目次を開く
  1. 知的発達症(知的障害)とは?
  2. 知能検査は大切。でも、それだけがその子の力ではない
  3. 生活の中で使えている力を見る
  4. 適応機能は、生活の中で見る
  5. 学習では「覚えるまで」に時間がかかることがある
  6. 「その場で分かった」と「生活で使える」は別
  7. 分かりやすい支援の3つのポイント
  8. 「何もできない」と見ない
  9. 支援することと、自立させることは対立しない
  10. 検査結果の先に、その子自身を見る
  11. 参考資料・関連記事
  12. 最後に|その子全体を見る

「IQが低いと、知的障害なんですか?」

「検査結果が低かったのですが、この子はできることが少ないのでしょうか?」

知的発達症について考えるとき、知能検査の結果は大切な情報の一つです。

一方で、私は検査結果だけで、その子の力全体を決めることはできないと考えています。

知的発達症を理解するためには、

  • 知的機能

  • 日常生活の中で必要な力

  • コミュニケーション

  • 社会生活

  • 身の回りのこと

  • 必要な支援の程度

などを、生活の中で総合的に見ることが大切です。

この記事では、知的発達症の基礎を整理しながら、支援現場でどのように子どもの力を見ていけばよいのかを考えていきます。

知的発達症(知的障害)とは?

医学の資料では「知的発達症」、教育・福祉の場では「知的障害」という名称も使われています。この記事では両方を併記します。「知的障害」が一律に使えなくなった、という意味ではありません。[2][3]

知的発達症は、知的機能と適応機能の両方に明らかな制約があり、それらが発達期からみられる神経発達症です。診断では、検査だけでなく、発達歴や日常生活の様子などを総合して評価します。[1]

知的機能には、例えば、

  • 理解する

  • 考える

  • 推理する

  • 記憶する

  • 経験から学ぶ

といった力が含まれます。

適応機能は、日常生活で身につけ、実際に使っている力です。概念的領域(言葉・読み書き・数など)、社会的領域(人とのやり取りや社会的判断など)、実用的領域(身の回りのことや生活の段取りなど)の3領域から捉えます。本人や家族、先生などからの情報も合わせて評価します。[1]

一方、適応機能は、学習だけではありません。

  • コミュニケーション

  • 身の回りのこと

  • 社会的なルール

  • 自分で判断すること

  • 困ったときに助けを求めること

など、実際の生活の中で必要となる力も含まれます。

そのため、知的発達症を考えるときには、IQの数値だけを見るのではなく、日常生活の中でどの程度支援が必要なのかも含めて考えることが大切です。[1]

知能検査は大切。でも、それだけがその子の力ではない

知的発達症の評価では、知能検査が重要な情報になります。

ただ、私は検査結果を見るとき、「この数字が、この子のすべてではない」

ということも忘れないようにしています。

私は、知能検査が設定された環境・限られた時間の中で、特定の課題に取り組むものだという点も意識しています。

多くの場合、普段あまり関わりのない人とやり取りしながら進めます。

そのため、

  • 緊張している

  • 場所に慣れていない

  • 相手との関係が十分にできていない

  • 課題の意味をうまく捉えられない

  • 本来持っている力を出し切れない

という可能性もあると、私は考えています。

もちろん、「検査は当てにならない」

ということではありません。

検査結果は、その時点での認知的な特徴を理解するための重要な資料です。

ただし、検査結果と、普段の生活で実際に発揮している力の両方を見る

ことが大切だと思います。

評価の背景にある時代や文化も意識する

私は、現在の知能検査や判定の枠組みも、現在の時代・社会・文化の中で成立した評価方法であり、時代や文化が異なれば評価のあり方も異なり得ると考えています。これは私自身の考えであり、検査が意味を持たないという話ではありません。検査結果を大切にしながら、目の前の子どもの生活と重ねて見たいと思っています。

ゆうた先生ゆうた先生

検査結果は大切にしながら、生活の中で実際に発揮している力も一緒に見ていきたいですね。数字だけでは見えない、その子の強みやその子らしさがあります。

生活の中で使えている力を見る

私が見てきた子どもたちの中には、生活の中で身につけた一連の動作に、しっかり取り組めるようになった子がいます。

例えば、毎日の支度。

着替え。

荷物の整理。

こうした一連の生活動作について、繰り返し経験することで、非常にしっかり取り組めるようになる子がいます。

最初は大人と一緒にやっていたことでも、少しずつ流れを覚え、最終的には自分から支度を始め、順番に進められるようになる。

私は、そうした姿を見てきました。ルーティンとして学べば、すべての子が同じようにできるようになる、という意味ではありません。

だからこそ、「今、一人ではできない」ことと「将来もできない」ことは別

だと考えています。

適応機能は、生活の中で見る

ここからの観察項目は、私が日々の支援で見ていることです。適応機能の考え方と重なりますが、医学的な診断基準や診断用チェックリストではありません。

私は子どもの適応面を見るとき、単純に、「できる」

「できない」

だけでは見ないようにしています。

例えば、

言葉と行動が一致しているか

「片づけます」

と言えることと、実際に自分で片づけを進められることは別です。

言葉として理解していることが、生活の中でどの程度行動につながっているかを見ます。

コミュニケーションの難しさが、生活にどれくらい影響しているか

言葉の数だけではなく、自分の気持ちや要求を伝えられるか。

相手の話を理解できるか。

困った場面でやり取りを続けられるか。

そうしたコミュニケーション上の難しさが、実際の生活でどの程度支障になっているかを見ます。

社会的なルールをどこまで理解しているか

順番、約束、公共の場での行動など、生活の中で必要となるルールをどの程度理解し、使えているかも大切です。

困ったときに助けを求められるか

私は、ここも非常に重要だと考えています。「困ったら先生に言う」と言葉で説明できても、実際に困った瞬間に助けを求められるとは限りません。言葉で知っていることと、その場面で行動できることを分けて見ます。

何でも一人でできることだけが自立ではありません。

自分では難しいときに、身近な大人に助けを求められることも大切な生活の力です。

学習では「覚えるまで」に時間がかかることがある

知的発達症のある子どもと関わっていると、特に学習面では、新しいことを覚えるまでに時間がかかる

と感じることがあります。

一度説明しただけでは定着しない。

前にできたことでも、別の日には難しくなる。

少し条件が変わると分からなくなる。

といったことがあります。

私は、その背景にワーキングメモリや短期記憶などの要素が関係している場合もあるのではないかと考えています。これは現場での私の見立てであり、知的発達症の原因を説明したものではありません。

ワーキングメモリは、情報を一時的に覚えながら扱う働きです。[4]「覚えにくい」という姿だけから、どの記憶の働きに難しさがあるかを決めることはできません。

ただし、これはすべての知的発達症の子どもに同じように当てはまるという意味ではありません。

その子が、何を覚えにくいのか。

どのような条件なら覚えやすいのか。

を個別に見ていく必要があります。

「その場で分かった」と「生活で使える」は別

学習で大切なのは、その場で答えられたかだけではありません。

例えば、プリントの中ではできた。

先生と一緒なら答えられた。

でも、実際の生活では使えない。

ということがあります。

私は、切り取られた学習だけで覚えたことは、実際の生活に般化するまでに時間がかかることがある

と感じています。

一方、生活の中で何度も経験したことは、少しずつ身につき、次の場面でも使えるようになることがあります。

だからこそ、繰り返すだけではなく、「これは自分の生活の中で何に使うのか」

が分かる形で経験することも大切だと考えています。

教育上の根拠として、文部科学省も、生活場面に即した繰り返しと、継続的・段階的な指導を重視しています。[3]ただし、生活に即した学習なら必ず定着するということではありません。どの条件で使いやすくなったかを、本人の姿から確かめます。

分かりやすい支援の3つのポイント

私が支援するときに特に大切にしているのは、次の3点です。

1.具体的であること

抽象的な説明だけではなく、実際の物。

実際の場面。

具体的な行動。

などと結びつけます。

2.その子が分かる言葉やイメージを使うこと

大人が正しく説明することよりも、本人に伝わっているか

を見ることが重要です。

難しい言葉を使うのではなく、その子がすでに知っている言葉や経験と結びつけながら、新しいことを学んでいきます。

3.スモールステップで進めること

最初から完成形を求めません。

「ここまでならできる」

というところから始め、一つずつ理解できる範囲を広げていきます。

「知的発達症なら写真カード」と一律に決めるのではなく、その支援を使うことで本人が実際に分かりやすくなったかを見ます。

「何もできない」と見ない

知的発達症という診断があることで、「できることが少ない」

「何もできない」

と思われてしまうことがあります。

また、「何度やっても覚えられない」

と捉えられることもあります。

しかし、一つの領域で難しさがあるからといって、その子全体の力まで低く評価する必要はありません。

例えば、学習はゆっくりでも、毎日の支度は自分からできる。

ということもあります。

できない部分だけを見て、その子全体を決めないこと。

これはとても大切だと思います。

支援することと、自立させることは対立しない

「手伝いすぎると自立できなくなる」

と言われることがあります。

もちろん、大人がすべてやってしまえば、本人が経験する機会を失ってしまいます。

ただ、だからといって、最初から一人ですべてやらせればいい、とも思いません。

私は、まず本人にとって必要十分な支援を入れること

が大切だと考えています。

まず必要十分な支援を行い、本人が取り組める状態をつくる。そのうえで、どの部分なら支援を減らせるかを見極める、という順番です。支援の減らし方やペースを一律には決めません。

本人の状態を見ながら、どこから支援を減らしていけるか

を考えます。

自立とは、最初から一人で全部やることではありません。

必要な支援を受けながら、自分でできる部分を少しずつ増やしていくこと

だと考えています。

また、必要な支援や合理的配慮まで、すべてなくすことが自立だとは限りません。

検査結果の先に、その子自身を見る

知的発達症について考えるとき、私たちはつい、IQ。

検査結果。

できること。

できないこと。

に目を向けやすくなります。

でも、目の前にいるのは、「知的発達症の子」

という存在ではありません。

一人の子どもです。

その子には、得意なこと、好きなこと、やさしさ、親しみ、愛嬌など、その子ならではの強みや人間性があります。その表れ方も一人ひとり違います。

そうした部分も含めて、その子自身です。

知的発達症という診断や検査結果は、その子を理解するための大切な情報です。

でも、それはその子を構成する一部であって、その子のすべてではありません。

参考資料・関連記事

医学・教育の一般情報は以下の公開資料を確認しています(確認日:2026年9月27日)。資料の公表年と確認日は異なります。個別の診断や検査結果の解釈は、医師・検査を担当した専門職にご相談ください。

  1. 米国精神医学会(APA)「What is Intellectual Disability?」:知的機能・適応機能・発達期、検査と総合的評価。
  2. 日本精神神経学会『精神神経学雑誌』「ICD-11における神経発達症群の診断について」(2022):名称と診断概念。
  3. 文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」Ⅲ 知的障害(2021、PDF):教育的ニーズ、知的機能と適応能力、生活に即した段階的な学習。
  4. 国立精神・神経医療研究センター病院「“ADHDタイプ”の方の対処策①」:ワーキングメモリという用語の説明を参照。ADHDの資料であり、知的発達症の原因や、すべての子どもの記憶特性の根拠にはしていません。

シリーズの関連記事:発達障害とは? / 自閉スペクトラム症(ASD)とは? / ADHDとは? / 限局性学習症(SLD/LD)とは?

日々の見立てには、発達検査の数値だけで支援を決めないためにと、「分かっているのに、なぜ動かない?」もご覧ください。

最後に|その子全体を見る

知的発達症のある子どもと関わるとき、私は次のことを大切にしたいと思っています。

検査結果は大切にする。でも、それだけでその子を決めない。

生活の中で実際にできていることを見る。

今できないことと、将来できないことを同じにしない。

まず必要な支援を入れ、そのうえで自分でできる部分を増やしていく。

そして、できる・できないだけではなく、その子の強みや人間性、やさしさ、親しみやすさ、愛嬌まで含めてその子を見る。

子どもの姿を理解するとき、数字や診断名だけでは見えないことがたくさんあります。

目の前の子どもが、何を理解していて、何に困っていて、どんな条件なら力を発揮できて、どんな魅力を持っているのか。

そこまで含めて考えていくことが、支援では大切だと思います。

子どもの行動には、必ず理由があります。まずは、その背景を見るところからスタートしてみてください。

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この記事を書いた人

ゆうた先生のアバター ゆうた先生 株式会社THE SHIP代表取締役/元特別支援学校教諭

株式会社THE SHIP代表取締役。東京学芸大学大学院教育学研究科特別支援教育専攻修了。元特別支援学校教諭。現在は山梨県で、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援を運営しています。子どもの行動の背景を丁寧に捉え、家庭や支援現場で実践できる発達支援・特別支援教育の情報を発信しています。

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