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ゆうた先生
元特別支援学校教諭/株式会社THE SHIP代表
東京学芸大学大学院 教育学研究科 特別支援教育専攻修了。

特別支援教育・発達支援の現場で、子ども一人ひとりの発達段階や特性に合わせた支援に取り組んできました。

現在は、山梨県で児童発達支援・放課後等デイサービス「SHIP」を運営しています。

子どもを「できない子」として見るのではなく、「これから学び、できることを身につけていく子」として捉え、その子にとって今ちょうどいい関わり方を考えることを大切にしています。

ABA、行動理解、視覚支援、環境調整、保護者支援などを、現場や家庭で使える形にして発信しています。
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「できる・できない」の二択では分からない子どもの力

子どもが積み木に取り組む姿を支援者が見守り、できることや必要な援助を考えているイラスト。
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「この子は、まだ一人で着替えができません」

「友達とのやり取りが苦手です」

「この課題はできるようになりました」

子どもの成長について話すとき、私たちは「できる」「できない」という言葉をよく使います。

もちろん、今できていることと難しいことを把握するのは大切です。

ただ、私は、その二つだけで子どもの力を判断するのは、少しもったいないと感じています。

例えば、「一人で着替えができない」という子どもがいたとします。

本当に、着替えのすべてが難しいのでしょうか。

服を選ぶことはできるかもしれません。

袖に手を通すことはできるかもしれません。

最初の部分を少し手伝えば、残りは自分でできるかもしれません。

「できない」とまとめてしまうと、こうした大切な力が見えにくくなります。

私は、子どもの発達を考えるとき、できる・できないという結果だけではなく、もう少し具体的に見ていくことを大切にしています。

今回は、そのための3つの視点を紹介します。

目次

1.「どこまでならできるのか」を見る

一つ目は、どこまでなら自分でできるのかという視点です。

例えば、着替えという活動を考えてみましょう。

着替えには、いくつもの動作があります。

  • 着る服を選ぶ
  • 服の前後を確認する
  • 袖に腕を通す
  • 服を引っ張って整える
  • 脱いだ服を片付ける

これらがすべてできて、初めて「着替えができる」と判断するのでしょうか。

もちろん、一人で一連の流れを行えるようになることも大切です。

しかし、まだ途中までしかできない場合でも、すでに身についている力はあります。

例えば、服の前後は自分で分かるけれど、袖に腕を通すことが難しい。

そのような姿があれば、できていることと、次に支援が必要なことを分けて考えられます。

私は、子どもの力を評価するときには、活動全体の結果だけではなく、その過程を見ることが大切だと思っています。

どこまでなら自分でできるのか。

どの部分で止まるのか。

何をきっかけに再び取り組めるのか。

そうしたことが分かると、次の支援を具体的に考えられるようになります。

活動のどこでつまずいているかを探る方法は、子どもが「できない」とき、何がブロックになっているかを考えるで紹介しています。

2.「どの程度の援助があればできるのか」を見る

二つ目は、必要な援助の量です。

例えば、子どもが活動の準備をするとき、毎回大人から言葉で指示されている場合を考えてみます。

「かばんを置いてね」

「次は連絡帳を出してね」

「終わったら座ろうね」

言われたとおりに行動できた場合、「準備ができた」と記録することもあるかもしれません。

しかし、どの程度の援助があったのかが分からなければ、子どもの今の力を正確に理解することは難しくなります。

例えば、次のように段階を分けてみます。

① 一人でできる

声かけや手助けがなくても、本人が流れを理解して行動できる。

② 手がかりがあればできる

写真や手順表などを見ながら、自分で確認して進められる。

③ 声かけや見本があればできる

大人が短く伝えたり、見本を示したりすることで取り組める。

④ 一緒に行えばできる

必要な部分を大人と一緒に行いながら、活動に参加できる。

この4段階は、説明のための整理例です。正式な発達検査の評価区分ではありません。

また、数字が小さくなるほど必ずよいという考え方でもありません。

その子にとって必要な援助が何かを理解するための視点です。

例えば、視覚的な手がかりを使いながら自分で行動できているのであれば、その方法は本人にとって大切な支援かもしれません。

援助をなくすことだけを目的にせず、本人が活動しやすい方法を考えることが必要です。

助けを求める力を含めた自立の考え方は、自立とは、何でも一人でできることなのかでお伝えしています。

3.「どのような条件ならできるのか」を見る

三つ目は、活動する環境や条件です。

私は、子どもが同じ力を持っていても、その力を発揮できる場面は変わると考えています。

例えば、友達とのやり取りが難しい子どもがいたとします。

大人数の活動では、なかなか自分の気持ちを伝えられない。

一方、少人数の遊びでは、友達に「貸して」と伝えられることがある。

その場合、「友達に気持ちを伝えられない子」とだけ考えてしまうのは、十分ではありません。

どのような条件なら伝えられるのかを考えます。

人数が少ないからでしょうか。

安心できる相手だからでしょうか。

使いたい言葉を事前に確認できていたからでしょうか。

活動に余裕があったからでしょうか。

こうした違いが分かることで、子どもが力を発揮できる環境を考えやすくなります。

ただし、一度うまくいった条件が、いつでも同じように役立つとは限りません。

子どもの体調や気持ち、周囲の状況も含めて、継続して様子を見ることが大切です。

学校と放デイで子どもの姿が変わる例は、学校では難しいのに放デイではできるのはなぜ?条件から考えるで紹介しています。

4.「できた」という記録を、もう一歩具体的にする

ここまでの3つの視点は、日々の支援記録にも活かせます。

例えば、次のような記録があったとします。

「片付けができた」

これだけでは、どのような状況で、何ができたのかが分かりにくいかもしれません。

そこで、少し具体的にしてみます。

※以下は説明用の架空の例です。

「活動終了を伝えると、本人が積み木を箱へ戻した。最後の2個は職員が箱の位置を示すことで、自分で片付けた」

このように書くと、次のことが分かります。

どのような活動だったのか。

どこまで自分でできたのか。

どのような援助が必要だったのか。

そして、支援の後にどのような行動が見られたのか。

私は、支援記録では「できた」という結果だけではなく、その過程が分かることも大切だと考えています。

そうすることで、次に関わる職員も、その子に合った支援を考えやすくなります。

5.「できなかった日」を、すぐに後退と決めつけない

子どもの成長は、毎日同じように進むわけではありません。

昨日はできたのに、今日は難しかった。

先週は一人でできたのに、今日は手伝ってほしがった。

そのようなこともあります。

もちろん、継続して難しくなっている場合には、状態の変化や必要な対応を確認することが大切です。

一方で、一度できなかったからといって、すぐに身につけた力がなくなったと判断する必要はないと思います。

例えば、疲れている日だったのかもしれません。

活動が普段より難しかったのかもしれません。

いつもと違う人が関わっていたのかもしれません。

私は、できた日とできなかった日を比較するときにも、それぞれの条件を確認することが重要だと考えています。

「昨日はできたのに、どうして今日はできないの?」

と考えるだけではなく、

「昨日と今日では、何が違ったのだろう?」

と考えてみます。

その視点が、子どもに必要な援助を考えるきっかけになります。

6.保護者へ伝えるときも、「できた・できない」だけにしない

子どもの成長を保護者へ伝える場面でも、同じことが言えます。

例えば、

「今日は一人で準備できませんでした」

と伝える場合。

もちろん、事実を伝えることは必要です。

しかし、それだけでは、保護者が子どもの成長をどのように捉えればよいか分かりにくいかもしれません。

例えば、

「かばんを置くところまでは自分でできました。連絡帳を出すところでは少し声かけが必要でした」

と具体的に伝えることができます。

これも説明のための架空の例です。

私は、保護者に子どもの様子を伝えるときには、できていることを具体的に伝えることも大切だと思っています。

そのうえで、今どの部分が難しく、次に何を大切にしていきたいのかを共有します。

子どもの成長を伝えることは、単にできる項目を増やして報告することではありません。

本人の今の姿を、保護者と一緒に理解していくことでもあると考えています。

7.次の目標は「少しの援助でできること」から考える

支援の目標を考えるときにも、できる・できないだけでは十分ではありません。

例えば、靴を履くことが難しい子どもがいたとします。

ただ「一人で靴を履けるようになる」という目標を立てるだけでは、今どのような支援が必要か分からないことがあります。

そこで、現在の姿を具体的に見ていきます。

靴を自分で持ってこられる。

足を入れるところまではできる。

かかとを入れる部分で援助が必要になる。

そのような状態であれば、まずはその難しい部分に対して、どのような援助を用意するかを考えられます。

最初から全部を一人で行うことを求めるのではなく、今の力と次に身につけたい力の間を考える。

私は、そのような目標の立て方を大切にしたいと思っています。

8.明日から使える「3つの確認」

子どもの活動を見たとき、まずは次の3つを確認してみてください。

① どこまでできたか

活動全体ではなく、具体的な過程を見る。

② どの程度の援助が必要だったか

声かけ、見本、環境調整、一緒に行う援助などを整理する。

③ どのような条件だったか

場所、人数、活動内容、相手、時間帯などを確認する。

この3つを記録するだけでも、「できた・できなかった」という結果から、もう一歩踏み込んだ理解につながると思います。

もちろん、これだけで子どもの発達をすべて評価できるわけではありません。

本人の気持ちや選好、体調、生活背景なども含めて考えていくことが必要です。

まとめ|子どもの力は、二択だけでは分からない

私は、「できる・できない」を確認することも必要だと考えています。

しかし、それだけでは子どもの今の力を十分に理解できないことがあります。

どこまでならできるのか。

どの程度の援助があればできるのか。

どのような環境や条件ならできるのか。

そこまで具体的に見ていくことで、次にどのような支援が必要かを考えやすくなります。

大切なのは、できないことを数えるだけでなく、すでに持っている力や、これから伸ばせそうな力を見つけていくことです。

私は、そのような視点を持ちながら、子ども一人ひとりに合った支援を考えていきたいと思っています。

子どもの姿を、もう少し具体的に理解したい方へ

ゆうた先生の発達ラボでは、子どもの行動や発達の理解、日々の支援の工夫について、現場や家庭で活用できる記事を紹介しています。

「できない」の背景や、子どもが力を発揮できる条件を一緒に考えてみませんか。

子どもが積み木に取り組む姿を支援者が見守り、できることや必要な援助を考えているイラスト。

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この記事を書いた人

ゆうた先生のアバター ゆうた先生 株式会社THE SHIP代表取締役/元特別支援学校教諭

株式会社THE SHIP代表取締役。東京学芸大学大学院教育学研究科特別支援教育専攻修了。元特別支援学校教諭。現在は山梨県で、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援を運営しています。子どもの行動の背景を丁寧に捉え、家庭や支援現場で実践できる発達支援・特別支援教育の情報を発信しています。

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