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ゆうた先生
元特別支援学校教諭/株式会社THE SHIP代表
東京学芸大学大学院 教育学研究科 特別支援教育専攻修了。

特別支援教育・発達支援の現場で、子ども一人ひとりの発達段階や特性に合わせた支援に取り組んできました。

現在は、山梨県で児童発達支援・放課後等デイサービス「SHIP」を運営しています。

子どもを「できない子」として見るのではなく、「これから学び、できることを身につけていく子」として捉え、その子にとって今ちょうどいい関わり方を考えることを大切にしています。

ABA、行動理解、視覚支援、環境調整、保護者支援などを、現場や家庭で使える形にして発信しています。
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子どもが「困った」と言えないときに|助けを求められる関係を育てる4ステップ

「困った」と言えないときに、手を挙げて助けを求める子どもと受け止める支援者のイラスト
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「困ったら、先生に言ってね」

そう伝えているのに、実際に困った場面になると、何も言わずに固まる。その場から離れる。活動を拒む。怒ったり、物を投げたりしてから、ようやく困っていたことが分かる。

先生や支援者としては、「言ってくれれば助けられたのに」と感じることがあるかもしれません。

しかし、「困った」と言えないことは、「困っていない」「助けてもらう気がない」という意味ではありません。

子どもが助けを求めるためには、自分の困りごとに気づくこと、それを伝える方法があること、そして、伝えたときに受け止めてもらえると感じられることが大切です。

この記事では、言葉だけに頼らず、子どもが助けを求めやすくなる関わり方を整理します。

目次

「困った」と言えない=困っていない、ではない

困っていることを言葉にするには、いくつもの力が必要です。

たとえば、分からなくなったことに自分で気づくこと。気持ちや状況を表す言葉を思い出すこと。誰に伝えればよいか判断すること。相手が聞いてくれるまで待つこと。

普段ならできる子でも、不安や緊張が強いとき、集団の中で急いでいるとき、失敗したと感じているときには、これらを同時に行うことが難しくなる場合があります。

また、過去に助けを求めたとき、「それくらい自分でやって」「さっき説明したでしょう」と言われた経験があれば、伝えること自体をためらうことも考えられます。

そのため、大人が最初に確認したいのは、「なぜ言わないのか」ではなく、「どの段階で難しくなっているのか」です。

助けを求めるために必要な3つの要素

1.自分が困っていることに気づく

「分からない」「難しい」「このままでは進めない」と、自分の状態に気づく段階です。手が止まっていても、本人は何に困っているのか整理できていないことがあります。

2.伝えられる方法がある

「困った」と話すことだけが、伝える方法ではありません。カードを見せる、手を挙げる、決めたサインを出す、指さす、「手伝って」と一言だけ言うなど、その子が使いやすい方法を用意できます。

3.伝えても大丈夫だと思える

伝え方が分かっていても、「怒られそう」「迷惑かもしれない」「また失敗したと思われるかもしれない」と感じていれば、助けを求めにくくなります。助けを求める力は、教え方だけでなく、伝えた後にどのような経験をしたかによっても育っていきます。

大人が見逃しやすい「言葉以外のSOS」

子どものSOSは、分かりやすい言葉で表れるとは限りません。たとえば、次のような姿の中に、困りごとが隠れている場合があります。

  • 課題の途中で手が止まる
  • 周囲を何度も見回す
  • 「できない」「もうやらない」と繰り返す
  • ふざけたり、別の話を始めたりする
  • トイレや別の場所へ行こうとする
  • 急に怒る、泣く、物を強く扱う
  • 大人の近くには来るが、何も言わない

ただし、同じ行動でも背景は一人ひとり異なります。

「手が止まったから助けを求めている」と決めつけるのではなく、どの場面で起きたか、その前に何があったか、声をかけた後にどう変化したかを見ながら考えることが大切です。

助けを求められる関係を育てる4つのステップ

1.困っているサインを一緒に見つける

まずは、大人が子どもの様子を短く言葉にします。

「手が止まったね。難しいところがある?」「何から始めるか迷っているかな?」「一人で考える? 一緒に見る?」

大人が原因を決めるのではなく、今の状態を伝え、子どもが選べる形にします。

2.使いやすい伝え方を、落ち着いているときに決める

困っている最中に、新しい伝え方を覚えるのは簡単ではありません。落ち着いている時間に、「分からないときは、このカードを出そう」「先生を呼ぶときは、机の端にこの印を置こう」など、使いやすい方法を一緒に決めます。

話すことが難しい子には、カード、指さし、身振りなども立派な意思表示です。最初から多くの方法を求めず、本人が使えそうな方法を一つか二つに絞ると、試しやすくなります。

3.伝えてくれたら、まず受け止める

子どもがサインを出したときは、「教えてくれてありがとう」「困ったことが分かったよ」と受け止めます。

その後で、「最初だけ一緒にする」「二つから選ぶ」「見本を見る」など、必要な分だけ支援します。助けを求めた直後に理由を細かく聞いたり、伝え方を訂正したりすると、次に伝えるハードルが上がることがあります。まずは「伝えたら助けてもらえた」という経験をつくることを優先します。

4.うまくいった経験を振り返り、少しずつ広げる

落ち着いた後に、「カードで教えてくれたから、一緒に始められたね」と具体的に振り返ります。

できたことを「えらい」で終わらせず、どの行動が役立ったのかを伝えることで、次の場面でも使いやすくなります。一人の先生との間で使えるようになったら、別の先生、違う活動、家庭や学校などへ少しずつ広げていきます。

避けたい対応

助けを求める力を育てようとするとき、次のような対応には注意が必要です。

  • 「ちゃんと言わないと分からない」と責める
  • 困っている最中に理由を何度も尋ねる
  • 大人がすべて先回りして解決する
  • 助けを求めたことを、後から注意の材料にする
  • 大人によって受け止め方が大きく異なる

何でも手伝えばよいわけではありません。一方で、「自分で言えるまで待つ」だけでも、必要な経験を積めないことがあります。子どもが自分でできる部分を残しながら、助けを求めるための足場をつくることがポイントです。

チームで共有したいこと

家庭、園、学校、事業所で伝え方が違うと、子どもは迷いやすくなります。支援者間では、少なくとも次の点を共有しておくと、関わりをそろえやすくなります。

  • 困ったときに見られやすいサイン
  • 本人が使いやすい伝え方
  • サインを受け取ったときの応じ方
  • どの程度まで手伝うか
  • うまくいった場面と、難しかった場面

「助けを求められなかった」と評価するだけでなく、「どの条件なら伝えられたか」を記録することが、次の支援につながります。

助けを求めることは、依存とは違う

「すぐに助けを求めるようになると、自分で考えなくなるのでは」と心配されることがあります。

しかし、自立とは、すべてを一人でできることだけではありません。自分でできることと難しいことを分け、必要なときに、必要な相手へ、必要な方法で助けを求めることも大切な力です。

目指したいのは、何でも大人に任せることではなく、「まず試す」「難しければ伝える」「助けを借りてもう一度取り組む」という流れを、その子に合った形で育てることです。

まとめ

子どもが「困った」と言えないとき、言葉だけを練習すれば解決するとは限りません。大切なのは、次の4点です。

  • 言葉以外のSOSにも気づくこと
  • 使いやすい伝え方を準備すること
  • 伝えたときに受け止めてもらえる経験を積むこと
  • うまくいった条件を、関わる人たちで共有すること

助けを求める力は、一度の声かけで完成するものではありません。

「困ったときに気づいてもらえた」「伝えたら受け止めてもらえた」「助けてもらいながら、もう一度取り組めた」。こうした小さな経験を、毎日の関わりの中で積み重ねていきます。

子どもとの信頼関係を、これまでの経験・今の関係性・これから積み重ねる経験から整理したい方は、関連記事「子どもとの信頼関係はどう育てる?」もあわせてご覧ください。

無料オンライン講座「『支援が届かない』と感じたときに見直したい“経験と関係性”」では、子どもを責めず、大人も抱え込まずに、明日の関わりを見直す視点を一緒に考えます。先生・支援者を中心とした内容ですが、保護者の方も参加できます。

※本稿は一般的な支援上の視点を整理したものです。個別の判断は、子どもの状態や環境、関係者間の情報を踏まえて行ってください。

「困った」と言えないときに、手を挙げて助けを求める子どもと受け止める支援者のイラスト

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この記事を書いた人

ゆうた先生のアバター ゆうた先生 株式会社THE SHIP代表取締役/元特別支援学校教諭

株式会社THE SHIP代表取締役。東京学芸大学大学院教育学研究科特別支援教育専攻修了。元特別支援学校教諭。現在は山梨県で、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援を運営しています。子どもの行動の背景を丁寧に捉え、家庭や支援現場で実践できる発達支援・特別支援教育の情報を発信しています。

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