この記事で扱う施設内のケース会議では、意見を出し切ることより、会議が終わるまでに「次に試す支援・担当・観察する変化・確認日」を決めることをゴールにします。
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、子どもの様子を丁寧に共有しても、話が広がって「結局、明日から何をするのか」が曖昧になることがあります。
原因を一つに決めるより、観察した事実と見立てを分け、確かめられる支援を小さく決めることが大切です。この記事では、施設内のケース会議を45分で進める7ステップと、進行役がそのまま使える問い、記録項目を紹介します。
会議の最後に残す5項目
- 次に試す支援:一つか二つ
- 担当者:誰が行うか
- 実施条件:いつ・どの場面で行うか
- 観察点:どの変化を記録するか
- 確認日:いつ振り返るか
この記事で扱うケース会議と、個別支援会議の違い
この記事でいう「ケース会議」は、日々の支援を職員間で振り返り、次に試すことを決める施設内の実務的な会議です。45分という時間は法令上の基準ではなく、限られた勤務時間の中で実施するための一例です。
一方、児童発達支援計画・放課後等デイサービス計画の作成や見直しに伴う個別支援会議、相談支援事業所が行う担当者会議、関係機関との会議には、それぞれ目的と必要な手続きがあります。施設内のケース会議だけで置き換えることはできません。
こども家庭庁のガイドラインでは、個別支援会議において支援に関わる職員へ意見を聴く機会を設け、年齢や発達の程度に応じて、子ども本人や保護者の意見を聴くことが示されています。施設の運営規程と自治体の案内を確認したうえで、会議の目的に合う参加者と手続きを選びます。
ケース会議の前に準備する6項目
会議時間を事実確認だけで使い切らないために、報告者は次の6項目を既存のケース整理用紙へ記入します。全生活歴を読み上げるのではなく、今日扱う一つの場面に必要な情報へ絞ります。
- 今日決めたい問い:「集団参加をどうするか」ではなく、「片付けから次の活動へ移る時、何を試すか」のように一つに絞る
- 扱う場面:いつ・どこで・誰といる時か
- 観察した事実:実際に見た行動、聞いた言葉、前後の出来事
- これまで試した支援と結果:何を行い、その後どう変わったか
- 本人の意向・強みと保護者の意向:本人が望んでいること、好きなこと、安心しやすい条件、会議の目的に必要な範囲で保護者から確認した希望
- 会議で決める範囲:次の1週間で試せることと、振り返る日
「落ち着きがない」「やる気がない」のような評価語を、観察できる事実へ直す方法は、支援記録で事実と解釈を分ける書き方で詳しく解説しています。
参加者と役割を決める
参加人数を増やすことより、目的に必要な人が参加し、役割が分かることを優先します。少人数の場合は、進行役が時間管理を兼ねても構いません。ただし、報告者が一人で説明・進行・記録をすべて担うと、検討が偏りやすくなります。
進行役
今日の目的を確認し、事実・見立て・支援案を分け、終了時間までに決定事項を読み上げます。
報告者
一つの場面を、観察した事実から説明します。自分の対応を評価してもらう場ではなく、チームが次の支援を考える材料を共有する役割です。
記録役
発言をすべて書き起こすのではなく、確認できた事実、残した仮説、次に試す支援、担当、観察点、確認日を記録します。
参加者・管理者
参加者は別の場面で見た事実と、実行可能な支援案を出します。管理者は、必要な人員や環境を確認し、担当者・開始日・振り返り日を確定します。
45分で進めるケース会議の7ステップ
この45分モデルは、1ケース・決める問い一つ・参加者3〜6名程度で、事前準備6項目が記入済みであることを前提とします。複数ケースや大人数の場合は、会議を分けるか時間を延長します。
最初から全体像を完成させようとせず、今日扱う一つの問いに集中します。話が広がった内容は「別に検討すること」として残し、目の前の進行へ戻します。
1.0〜3分|目的と終了時刻をそろえる
進行役が「今日は、片付けから次の活動へ移る時に試す支援を一つ決めます。終了は16時45分です」と伝えます。子どもや職員を責めず、見立ては断定せずに扱うことも確認します。
2.3〜10分|一つの場面を事実で共有する
報告者は、時間、場所、直前の状況、周囲の関わり、子どもの言葉や行動、その後の変化を説明します。参加者は、この段階では助言を急がず、不足している事実だけを質問します。
3.10〜15分|うまくいった条件と本人の強みを確認する
同じ活動でも困りごとが起きなかった時、本人が自分から動けた時、安心していた時を探します。困った場面だけでなく、すでに役立っている伝え方、好きなこと、分かりやすい環境を支援の材料にします。
4.15〜23分|見立てを二つか三つの仮説として出す
「予定の終わりが分かりにくかった可能性」「一斉の言葉だけでは次の行動が分かりにくかった可能性」のように、観察した事実から考えられる背景を複数出します。診断名や性格だけで原因を決めず、次の観察で確かめられる形にします。
5.23〜32分|次に試す支援を一つか二つに絞る
環境、伝え方、活動の量、見通し、選択肢など、明日から実施できる変更を出します。支援案を多く並べて終わらせず、負担が少なく、仮説を確かめやすいものを一つか二つ選びます。
6.32〜39分|担当・場面・観察点を決める
「担当職員が、片付け3分前に写真とタイマーを示す。次の1週間、移動までの時間と本人の伝え方を記録する」のように、誰が、いつ、どこで、何を行い、何を観察するかを決めます。
7.39〜45分|決定事項を読み上げ、確認日を決める
記録役が、次に試す支援、担当、開始日、観察点、記録場所、振り返り日を読み上げます。参加者が同じ内容を理解しているか確認し、1週間後など近い日程に短い振り返りを設定します。
30分しか取れない場合
事実とこれまで試した支援を会議前に記入し、会議では「目的3分・不足事実5分・見立て5分・支援選択6分・実施条件5分・読み合わせ6分」を目安にします。短くしても、確認日は省きません。
進行役が使える12の問い
事実をそろえる問い
- 実際に見たこと、聞いたことは何ですか。
- その直前と直後に、何がありましたか。
- 同じ場面でも起きなかった日はありますか。
見立てを広げる問い
- 本人には、どのように見えたり伝わったりしていたでしょうか。
- どのような可能性が考えられますか。
- その見立てと合わない事実はありますか。
- 次回、何を観察すれば確かめられますか。
支援を決める問い
- 明日から全職員が試せる、最小の変更は何ですか。
- 環境や伝え方で変えられる点はありますか。
- 本人の好きなことや、うまくいった条件をどう生かせますか。
- どの変化があれば、支援を続けると判断できますか。
- 誰が行い、どこへ記録し、いつ振り返りますか。
会議がまとまらない5つの原因と戻し方
1.テーマが広すぎる
「集団参加を改善する」ではなく、「朝の会で着席する前の伝え方」のように、場面を一つに戻します。
2.事実を確認する前に助言が始まる
進行役が「支援案は後で扱います。まず直前と直後の事実を確認します」と交通整理します。
3.見立ての正解を決めようとする
見立ては仮説として二つか三つ残し、どの観察や支援で確かめるかを決めます。
4.支援案が多すぎる
実行しやすさ、本人の負担、観察のしやすさで優先順位をつけ、次の1週間は一つか二つに絞ります。
5.「様子を見る」で終わる
何を見るのか、誰が記録するのか、いつ判断するのかを決めます。「次の1週間、活動開始までの時間を担当者が記録し、金曜日に確認する」のように具体化します。
そのまま使えるケース会議の記録項目
新しい様式を増やさず、施設で使っている記録やケース整理シートへ、次の項目を追加します。
会議日時:
参加者・役割:
今日決める問い:
対象場面:
本人・保護者の意向:
観察した事実:
うまくいった条件・本人の強み:
これまで試した支援:
支援後の変化:
見立て・仮説A:
見立て・仮説B:
次に試す支援:
担当者:
開始日・対象場面:
観察する変化:
記録する場所:
決定事項の共有先・共有方法:
振り返り日:
振り返り結果と次の判断:
氏名、生年月日、診断名、家庭情報などは、会議の目的に必要な範囲だけを施設の規程に沿って扱います。子どもの情報を、施設が利用を承認していない生成AI、外部フォーム、個人のメールやチャットへそのまま入力しないでください。
架空例|「切り替えが苦手」を、次の支援へ変える
以下は手順を説明するために作成した架空例で、実在する事例ではありません。
今日決める問い:自由遊びの片付けから次の活動へ移る時、何を試すか。
観察した事実:15時10分、片付けの一斉の声かけ後、遊具を持ったまま部屋の隅へ移動した。職員が次の活動の写真を示し、「あと1回」を伝えると、遊具を箱へ入れて移動した。
見立て:一斉の言葉だけでは次の予定と終わりが分かりにくかった可能性、遊びを自分で終える区切りが必要だった可能性を残す。
次に試す支援:片付け3分前に写真とタイマーで知らせ、最後に行う遊びを一つ選べるようにする。
観察点:予告後の本人の反応、片付けを始めるまでの時間、自分から伝えた言葉や行動を1週間記録する。翌週の金曜日に15分だけ振り返る。
担当者・期間・記録場所:当日の自由遊び担当職員が、翌開所日から1週間実施する。結果は既存の日々の支援記録へ残し、翌週金曜日に確認する。
会議後は、1週間試して15分で振り返る
- 会議当日に、決定事項を既存の記録場所へ残す
- 関係する欠席職員へ、支援手順・対象場面・記録項目・確認日を既存の共有場所で伝える
- 一つのケース・一つの場面で、1週間試す
- 日々の記録を「事実・行った支援・その後の変化」で残す
- 1週間後に15分で比べ、継続・修正・終了を決める
- 継続する場合は共通手順を更新し、14日後または30日後の再確認日を決める
- 変更・終了の理由も残し、古い手順が共有場所に残らないよう更新する
- 必要に応じて、個別支援計画のモニタリングと見直しへ戻す
支援が機能しなかった時は、職員の努力不足と考えるのではなく、見立て、実施条件、本人の反応を見直します。安全上の重大な懸念、虐待が疑われる状況、健康状態の急変などがある場合は、通常のケース会議を待たず、法令・自治体の案内と施設の緊急対応・通報・連携手順に従ってください。
ケース会議についてよくある質問
毎回45分取れない場合はどうしますか?
事実とこれまでの支援を事前記入し、30分版で実施できます。さらに短い場合は、前回決めた支援の振り返りだけを15分で行います。短くても、担当と次の確認日は残します。
職員の意見が分かれた時は、誰が決めますか?
一つの見立てを多数決で正解にせず、複数の仮説を残します。そのうえで、本人の利益と負担、安全性、実行可能性を確認し、次に何を観察すれば判断できるかを決めます。最終的な運用判断は、施設の役割分担と責任体制に従います。
子ども本人や保護者は参加しますか?
会議の種類と目的、本人の年齢や発達の程度、負担を踏まえて決めます。参加しない場合も、事前に意向を聴く、本人が表しやすい方法を使うなど、意見を検討へ反映します。正式な個別支援会議では、ガイドラインと施設・自治体の手続きを確認してください。
まとめ|会議の質は、翌日から試せるかで確認する
- 今日決める問いと場面を一つに絞る
- 事実、うまくいった条件、本人の意向から話す
- 見立ては断定せず、二つか三つの仮説として残す
- 次に試す支援を一つか二つに絞る
- 担当、対象場面、観察点、確認日まで決める
- 1週間試し、15分の振り返りで記録と計画へ戻す
この記事で扱う施設内のケース会議は、詳しい人が答えを出す場ではありません。異なる場面で見た事実を持ち寄り、子どもにとって負担の少ない支援をチームで小さく試す場です。
参考にした公的情報
- 文部科学省「もし、ケース会議の進行役をすることになったら?」
- こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)
- こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン」(令和6年7月)
- こども家庭庁「障害児支援におけるこどもの意思の尊重・最善の利益の優先考慮の手引き」(令和6年8月)
管理者・児発管・研修担当者の方へ
会議で決めた支援を、30日間の実践へつなげたい施設へ
職員ごとに記録や支援が異なる、会議後に元の方法へ戻るといった課題を、研修と施設内テンプレートで整理します。2時間の標準オンライン研修と、30日実践シート・管理者振り返り・60分ケースレビュー・1か月フォローを含む30日実装型があります。
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