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ゆうた先生
元特別支援学校教諭/株式会社THE SHIP代表
東京学芸大学大学院 教育学研究科 特別支援教育専攻修了。

特別支援教育・発達支援の現場で、子ども一人ひとりの発達段階や特性に合わせた支援に取り組んできました。

現在は、山梨県で児童発達支援・放課後等デイサービス「SHIP」を運営しています。

子どもを「できない子」として見るのではなく、「これから学び、できることを身につけていく子」として捉え、その子にとって今ちょうどいい関わり方を考えることを大切にしています。

ABA、行動理解、視覚支援、環境調整、保護者支援などを、現場や家庭で使える形にして発信しています。
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文字を書くのが苦手な子、何につまずいている?|「書けない」を支援につなげる5つの見方

マス目のノートに鉛筆で書く子どもを、隣で見守る支援者
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ゆうた先生

同じ「書けない」でも、つまずいている場所は一人ひとり違います。練習を増やす前に、まずは“どこで困っているか”を丁寧に見ていきましょう。

「もっと丁寧に書いてみよう」
「お手本をよく見て」

そう声をかけても、文字がなかなか整わない。何度練習しても、マスからはみ出す。書き始めるまでに時間がかかる。

そんなとき、つい「練習が足りないのかな」と考えたくなります。

でも、ここでいったん立ち止まってみたいんです。

この子は、「書く」という活動のどこで困っているんだろう?

同じ「文字を書くのが苦手」という姿でも、つまずいている場所は同じとは限りません。

文字の形を捉えるところかもしれない。見本と自分の文字を比べるところかもしれない。鉛筆を動かすことや姿勢、枠の位置、あるいは、これまでの経験から「書くことそのもの」がつらくなっているのかもしれません。

「書けない」という結果から原因を決めるのではなく、書く活動を小さく分けて観察する。

今回は、そのための5つの見方を、現場で使いやすい形に整理します。

まず大切にしたいこと:診断名より、今見えている姿から

「ASDだから体のイメージが弱い」「LDだから認知面が原因」と、診断名から一つの原因を決めることはできません。

診断名が同じでも、書く場面で困っていることは一人ひとり違います。反対に、診断がなくても、文字を書くことに強い負担を感じている子はいます。

見る順番は、診断名 → 原因ではなく、具体的な姿 → 仮説 → 試す → 反応を見るです。

決めつけ
「不器用だから書けない」
観察
「どの線で止まる? 見本が近いと変わる? 枠を大きくするとどう?」

文部科学省の資料でも、「いつ・どこで・どのような時に・どんな問題が起こるか」を観察し、つまずきの様子を正確に把握することが大切だとされています。国立特別支援教育総合研究所の資料も、読みの状態や間違いやすい文字、形の捉え方、目と手の協応などを丁寧に見る考え方を示しています。

1

文字の形を見分け・捉えられている?

最初に見るのは、文字を「手で書く前」の部分です。

観察してみたいこと

  • 「シ」と「ツ」など、似た形の違いに気づけるか
  • 線の向きや本数、交わる位置を言葉や指差しで示せるか
  • 文字を見た直後と、少し時間がたった後で書き方が変わるか
  • ひらがな・カタカナ・漢字で困り方に違いがあるか
試してみるなら
文字を大きくする、注目する部分に色をつける、文字をパーツに分ける、形に短い言葉で意味づけをする。

「形が分からない」と「形は分かるけれど手で再現しにくい」は、別の困りごとかもしれません。まず分けて見ます。

2

見本と自分の文字を比べられている?

お手本が見えていても、どこを比べればよいか分からないことがあります。

観察してみたいこと

  • 見本と自分の文字の「同じところ・違うところ」を一つ挙げられるか
  • 見本が黒板にある時と、手元にある時で書きやすさが変わるか
  • 「丁寧に」ではなく、比べる場所を一つ伝えると修正できるか
  • 書き終わった後、自分で見直す余力が残っているか
試してみるなら
見本を手元に置く。「横線の長さだけ見よう」「交わる場所だけ見よう」と、比べるポイントを一度に一つにする。

「よく見て」より、「今日はここを見る」の方が、子どもが何をすればよいか分かりやすくなります。

3

鉛筆操作・手指・姿勢はどう?

文字の形は分かっていても、鉛筆で表す時に負担が大きいことがあります。

観察してみたいこと

  • 短い線・長い線・曲線で、書きやすさに違いがあるか
  • 筆圧が強すぎる、弱すぎる、途中で大きく変わることはあるか
  • 鉛筆を何度も持ち直す、手や肩を頻繁に振る、疲れを訴えることはあるか
  • 足が床につく、紙を反対の手で押さえるなど、姿勢を保てているか
  • 鉛筆や紙を変えると負担が減るか
試してみるなら
太さや滑りにくさの違う鉛筆・補助具を試す。机と椅子、足元、紙の角度を調整する。短い時間で区切り、疲れる前に休む。

姿勢だけを「正しく直す」ことが目的ではありません。書く活動に使える力や注意を残せる環境かどうかを見ます。

4

枠・位置・大きさを捉えられている?

一文字ずつは書けても、マスの中に収める、行をそろえる、文字同士の間隔を取るところで難しさが出ることがあります。

観察してみたいこと

  • 枠が大きいと書きやすくなるか
  • 十字の補助線や、書き始めの印があると変わるか
  • 縦書き・横書き、白紙・罫線・マス目で違いがあるか
  • 一文字では整うのに、文章になると崩れないか
試してみるなら
大きなマス、中心線、始点の印、色分けした枠を使う。慣れてきたら、補助を一つずつ減らす。

国立特別支援教育総合研究所は、使いやすい用具や大きいマス目・罫線のある用紙、ワークシートによる書く負担の調整を例示しています。

5

そもそも、書くことがつらくなっていない?

ここは、技術面と同じくらい大切です。

書き直しが続いた。周りより遅れてしまった。「雑」「ちゃんと見て」と言われてきた。そんな経験が重なると、鉛筆を持つ前から体が固まったり、課題を避けたりすることがあります。

観察してみたいこと

  • 書く課題を出した時、表情や姿勢、返事はどう変わるか
  • 書く量が増えると、集中や正確さが急に落ちないか
  • 口頭なら答えられるのに、書く課題では止まらないか
  • 人に見られる場面と、一人の場面で違いがあるか
試してみるなら
書く量を減らす、選択式にする、口頭で答える部分をつくる。「全部きれいに」ではなく、今日の目標を一つに絞る。

苦手意識を「やる気の問題」にしないこと。負担を調整して、学習内容そのものに参加できる形を守ります。

「書けるようにする」だけが支援ではない

文字を書く練習が役立つ場面はあります。でも、授業の目的が「文字をきれいに書くこと」ではなく、「考えること」「内容を理解すること」「自分の意見を伝えること」なら、手書きだけに方法を限定しない方がよいこともあります。

文部科学省は、文字を綴ることが難しい場合に、タブレット端末で板書を記録したり、音声入力を使ったりする代替手段も示しています。

キーボード入力
長い文章や記録を、手書き以外で表す
タブレット
板書を撮る、拡大する、直接入力する
音声入力
考えを話して文章にし、後から整える
筆記補助具
握りやすさや滑りにくさを調整する
書く量の調整
穴埋め、選択式、ワークシートを使う
役割を分ける
考える時間と、書き写す時間を分ける

これは「書くことをあきらめる」という話ではありません。

練習する場面と、学ぶために別の方法を使う場面を分ける。そう考えると、子どもの学ぶ機会を守りながら、必要な力にも取り組みやすくなります。

支援は「仮説 → 試す → 反応を見る」で調整する

5つの視点を全部、一度に評価する必要はありません。

まず、今いちばん気になる場面を一つ選びます。そして、支援も一つだけ変えてみます。

見本を手元に置いたら?
マスを大きくしたら?
書く量を半分にしたら?
口頭で答えてよい部分をつくったら?

その時の子どもの変化を見ます。うまくいけば続ける。変わらなければ、別の見方を試す。

支援は、最初から正解を当てることではありません。子どもの反応から、見立てを少しずつ確かにしていくことだと思っています。

まとめ|「できない」より先に、「どこで困っている?」

  1. 文字の形を見分け・捉えられているか
  2. 見本と自分の文字を比較できるか
  3. 鉛筆操作・手指・姿勢はどうか
  4. 枠・位置・大きさを捉えられているか
  5. 書くことへの負担や苦手意識が大きくなっていないか

診断名から原因を決めず、具体的な姿を観察する。必要なら、キーボードやタブレット、音声入力、書く量の調整も使う。

「書けない」を責める材料ではなく、支援を考える入口に変えていきましょう。

参考にした一次情報

観察事実と解釈を分ける|無料実践セット

「実際に起きたこと」と「そこから考えたこと」を分けて整理すると、次に試す支援が見えやすくなります。

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マス目のノートに鉛筆で書く子どもを、隣で見守る支援者

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この記事を書いた人

ゆうた先生のアバター ゆうた先生 株式会社THE SHIP代表取締役/元特別支援学校教諭

株式会社THE SHIP代表取締役。東京学芸大学大学院教育学研究科特別支援教育専攻修了。元特別支援学校教諭。現在は山梨県で、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援を運営しています。子どもの行動の背景を丁寧に捉え、家庭や支援現場で実践できる発達支援・特別支援教育の情報を発信しています。

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