MENU
ゆうた先生
元特別支援学校教諭/株式会社THE SHIP代表
東京学芸大学大学院 教育学研究科 特別支援教育専攻修了。

特別支援教育・発達支援の現場で、子ども一人ひとりの発達段階や特性に合わせた支援に取り組んできました。

現在は、山梨県で児童発達支援・放課後等デイサービス「SHIP」を運営しています。

子どもを「できない子」として見るのではなく、「これから学び、できることを身につけていく子」として捉え、その子にとって今ちょうどいい関わり方を考えることを大切にしています。

ABA、行動理解、視覚支援、環境調整、保護者支援などを、現場や家庭で使える形にして発信しています。
ゆうた先生の公式LINE

注意しても同じ行動を繰り返す子に、注意を増やす前に確認したい5つのこと

遊びで声や動きが大きくなる子に、支援者が適切な関わり方を実演する様子
  • URLをコピーしました!

友達と楽しそうに遊んでいる。

最初は穏やかだったのに、楽しくなるにつれて、声がだんだん大きくなっていく。動きも大きくなり、物の扱いが雑になったり、相手との距離が近くなったり、力加減が難しくなったりする。

そんなとき、みなさんはどんな言葉をかけていますか?

「声を小さくしよう」

「優しくしてね」

「ふざけすぎないよ」

そう伝えても、しばらくすると、また同じことが起きる。こうした場面に、心当たりのある方もいるかもしれません。

こんにちは!ゆうた先生です♪

今回は、注意しても同じ行動を繰り返す子どもへの関わりについて、一緒に考えていきたいと思います。

同じことが続くと、私たちはつい「分かっているのに、やらない」「何度言っても聞かない」と考えたくなります。毎日向き合っている支援者だからこそ、どうしたら伝わるのだろうと悩み、言葉が少しずつ強くなってしまうこともあるかもしれません。

けれども、落ち着いているときにルールを説明できることと、楽しい遊びの最中に自分の声量や力加減を調整できることは、同じではありません。

私は、注意すること自体を否定したいわけではありません。危険な行動や、他の子を傷つける行動は、その場で止める必要があります。守るべきルールを伝えることも、とても大切です。

ただ、同じ注意を何度繰り返しても行動が変わらないとしたら、どうでしょうか?

もしかすると、必要なのは注意をさらに強くすることではなく、支援の方法を見直すことかもしれません。

ゆうた先生

同じ注意が続くときは、注意を強くする前に、支援の方法を一緒に見直してみましょう♪

この記事で一緒に考えたいこと
注意によって、その場の行動が止まることはあります。しかし、注意だけで「次にどうすればよいか」まで自動的に分かるわけではありません。止めた後に、してほしい行動を具体的に教え、子どもが実際にできる条件を整えることが必要です。

「分かっていること」と「その場で行動できること」の違いは、「分かっているのに、なぜ動かない?」でも詳しく整理しています。

目次

危険や他害があるときは、まず安全を確保する

まず最初に、ここは大切なので、はっきりお伝えします。

物を投げようとしている。友達をたたこうとしている。道路へ飛び出しそうになっている。

こうした場面では、理由を考えることを優先して、見守り続けるわけにはいきません。まずは行動を止め、本人と周囲の安全を確保します。

そのときは、長い説明を重ねるよりも、

「止まります」

「手を離します」

など、短く分かりやすい言葉で伝えます。

では、安全を確保できたら、それで支援は終わりでしょうか?

私は、安全のために「今の行動を止めること」と、次の場面でできるように「教えること」は、分けて考える必要があると思っています。

落ち着いてから、何が起きやすかったのか、代わりにどうすればよかったのか、どのような環境なら成功しやすいのかを一緒に考えていきます。

現場で感じた、注意だけでは変わりにくかった場面

私も支援の現場で、友達との遊びが盛り上がるにつれて、声や動きが大きくなり、力加減が難しくなる子どもたちに出会ってきました。

そのたびに「声を小さく」「優しく」と伝える。でも、なかなか変わらない。

「伝えているのに、どうしてだろう?」と感じることもありました。

一方で、遊びに入る前や、行動が激しくなる少し前に、その子が別の場面で頑張っていたことや、すでにできていたことを具体的に伝えると、その後の遊びが穏やかに続くことがありました。

また、「優しくして」と言葉で伝えるだけでなく、大人が適切な声量や力加減、友達への声のかけ方を実際に見せてみる。そして、子どもにも同じように一度やってみてもらう。すると、そこからしばらく落ち着いて遊べたこともあります。

単に注意するよりも、

「ここはよかったよ。次は、ここをもう少しこうしてみよう」

と、できている部分と変えてほしい部分を分けて伝えたほうが、子どもが受け取りやすくなり、次の行動も選びやすくなることがあります。私は現場で、そんな印象を持ってきました。

では、なぜ変わったのでしょうか?

認められたことで気持ちが整い、大人の言葉を受け取る余裕が生まれたのかもしれません。大人の声の調子や関係性が変わったことや、見本によって「どうすればよいか」が具体的に分かったことも影響していた可能性があります。

注意や指示の伝わり方には、それまでの経験や関係性も影響します。子どもとの信頼関係を支援の手段にせず育てる視点も、あわせてご覧ください。

私はこうした姿を、子どもの「心の余裕が少し戻った」と捉えることがあります。

ただし、褒めたり認めたりすることで、何らかの心的なリソースが実際に補充されたと確認できたわけではありません。あくまで、現場での観察から立てた仮説の一つです。理由を一つに決めつけるのではなく、次の支援を考える材料として見ています。

それでは、注意を増やす前に確認したい5つのことを、一つずつ見ていきましょう♪

1.行動が大きくなる「少し前」を見ているか

注意が必要になった瞬間だけを見ると、子どもが急に大声を出したり、急に乱暴になったりしたように見えることがあります。

でも、本当に「急に」なのでしょうか?

よく見てみると、その少し前から、小さな変化が始まっていることがあります。

  • 遊ぶ人数が増えた
  • 遊びが長く続き、疲れが見え始めた
  • 勝ち負けがある活動に変わった
  • 周囲の音や動きが増えた
  • 声や動きが、少しずつ大きくなっていた
  • 相手との距離が近くなっていた
  • ルールが増えたり、展開が速くなったりした

例えば、人数が増えると声が大きくなる傾向が見えたなら、最初は少人数で遊び始める。一定の時間がたつと動きが大きくなる傾向があるなら、その前に水分を取る時間をつくる。少しずつ声が大きくなるのであれば、早い段階で大人が声量の見本を示す。

この「少し前」が分かると、激しくなってから止める以外の選択肢が見えてきます。

ここで大切なのは、楽しく遊ぶこと自体を抑えることではありません。楽しさを保ちながら、安全に遊び続けられる条件を探すために見ていくということです。

観察するときは、「興奮していた」「ふざけていた」とまとめず、実際に見たことを具体的に残しましょう。事実と見立ての分け方は、発達支援の記録で「事実」と「解釈」を分ける方法も参考にしてみてください。

2.「してはいけないこと」だけを伝えていないか

「大声を出さない」

「ちょっかいを出さない」

「走らない」

「ルールを破らない」

どれも、やめてほしい行動を伝える大切な言葉です。

ただ、ここで一つ考えてみてください。「しないこと」は分かっても、その代わりに何をすればよいか、子どもに伝わっているでしょうか?

次に選んでほしい行動まで、具体的に示していきます。

やめてほしいことだけを伝える代わりにしてほしい行動を示す
大声を出さないこの場所では、このくらいの声で話す
ちょっかいを出さない一緒に遊びたいときは「入れて」と言う、または決めた合図をする
離席しない休みたいときは「休憩」と伝え、決めた場所で休む
乱暴にしないボールはこの線から転がす、手ではなく言葉で知らせる
ルールを守る今回守る一つか二つのルールを、見える形で確認する

そして、代わりの行動は、大人にとって都合がよいだけでは続きません。

その子は何をしたかったのでしょうか?

友達と関わりたかったのかもしれない。体を動かしたかったのかもしれない。少し休みたかったのかもしれない。自分の思いを伝えたかったのかもしれません。

本人の目的も満たしながら、安全に選べる行動を一緒に探していけるとよいですね。

3.言葉だけでなく、見せて一緒に試しているか

「優しく」

「静かに」

「ちゃんと」

私たちは、ついこうした言葉を使います。でも、「優しく」はどのくらいの力なのでしょうか?「静かに」はどのくらいの声でしょうか?

大人同士でも受け取り方が異なる言葉です。声量や距離、力加減のように目に見えにくいものは、実際に見せることで分かりやすくなることがあります。

  • 声の大きさを数字や絵で示し、大人が実際に声を出して見せる
  • ボールを投げる、転がすときの力加減を実演する
  • 友達に「入れて」「貸して」と声をかける場面を短く演じる
  • 遊んでよい場所や待つ位置を、線やマークで示す

見本を見せたら、

「同じように、一回やってみよう」

と、短く練習してみます。

見本を示す「モデリング」と、実際に試す「リハーサル」の流れは、ソーシャルスキルトレーニング(SST)の進め方でも紹介しています。

できたところは、その場で具体的に返します。そして、長い説明を続けずに遊びへ戻る。ここがポイントです♪

「分かった?」と尋ねるだけでなく、実際に一度やってみる。そうすることで、言葉の理解だけを見ていたときには気づかなかった難しさが、見えてくることもあります。

ゆうた先生

「分かった?」で終わらせず、大人が見せて、一度一緒にやってみる。ここが大切です♪

4.できている部分や努力も、具体的に伝えているか

行動が気になり始めると、大人の言葉が、修正や注意だけになりやすくなります。

支援者も、なんとか安全に、なんとかうまくいってほしいと思っているからこそ、気になるところへ目が向くんですよね。

でも、一つの場面をよく見てみると、すでにできていることもあります。

  • 順番を待てていた
  • 友達に道具を渡せていた
  • 一度は声量を下げられた
  • 声をかけると立ち止まれた
  • 遊びを続けたい気持ちを言葉で伝えられた

できていることを具体的に伝えたうえで、次に変えてほしいことを一つに絞ります。

「順番は待てていたね。今は、声を一つ小さくして話そう」

「ボールを渡す力はちょうどよかったよ。追いかけるのは、この線までにしよう」

「止まれたね。次は『入れて』と声をかけてみよう」

このように伝えることで、子どもは「全部だめだった」ではなく、「ここまではできた。次はこれをすればよい」と受け取りやすくなることがあります。

ただし、注意を受け入れさせるために、形だけ褒めるということではありません。実際にできていた行動や努力を見つけ、何がよかったのかを具体的に返すことが大切です。

具体的なほめ方や、子どもによって伝わりやすい返し方の違いは、「ほめる」ときに確認したい具体的なポイントでも詳しく紹介しています。

「全部できていない」と見るのではなく、「どこまではできているのだろう?」と考えてみる。そうすると、次に教える一歩も、小さく具体的にできます。

5.子どもが守りやすい環境やルールになっているか

同じ場面で何度も注意が必要になるとき、私たちは本人の意欲や頑張りに目を向けがちです。

でも、行動が起きやすい条件は、環境や活動の側にもないでしょうか?

起きていること見直せる環境や活動の例
人が増えると声や動きが大きくなる少人数で始める、役割や順番を決める
長く遊ぶと力加減が難しくなる短い時間で区切り、途中で一度確認する
室内で走り始める動いてよい場所を設け、遊ぶ場所を分ける
道具を強く扱う扱いやすい大きさ・硬さの道具に替え、使い方を見せる
複数のルールを忘れる優先するルールを一つか二つに絞り、絵や短い言葉で示す

「環境やルールを調整したら、甘やかすことにならないだろうか?」と感じる方もいるかもしれません。

けれども、環境を調整することは、ルールをなくすことでも、危険な行動を容認することでもありません。

今の子どもが成功できる形に整え、できた経験を重ねながら、少しずつ条件を広げていくための支援です。

例えば、いきなり大人数の中で長くルールを守ることが難しいのであれば、まずは少人数で短い時間から始める。そこでできたことを確認してから、人数や時間を少しずつ広げていく。

繰り返し失敗しやすい環境をそのままにして、本人の努力だけを求めないこと。これは、子どもを理解するうえで、とても大切な視点だと考えています。

明日から試すなら、一つの場面に絞る

ここまで5つの視点をお話ししてきました。

「全部取り組まなければ」と思うと、大人にとっても大変ですよね。すべてを一度に変える必要はありません。

ゆうた先生

全部を変えなくて大丈夫です。まずは一つの場面、一つの工夫から始めてみましょう♪

まずは、注意が繰り返されている一つの場面を選んでみましょう。

  1. 危険があるときは、短い言葉で止めて安全を確保する
  2. どのような行動が、いつ起きているかを具体的に書く
  3. 行動が大きくなる前の小さな変化を一つ探す
  4. 「してはいけないこと」を「してほしい行動」に言い換える
  5. 大人が見本を見せ、子どもと一回だけ練習する
  6. できていた行動や努力を、具体的に一つ伝える
  7. 人数、場所、時間、道具、ルールのどれか一つを調整する
  8. その後の様子を記録し、同じ方法を続けるか見直す

支援は、一度で正解を当てることではありません。

一つ変えてみる。子どもの様子を見る。うまくいった部分と、まだ難しい部分を確認する。そして、また一緒に考える。

その積み重ねが、その子に合った支援につながっていきます。

まとめ|同じ注意が続くときは、支援を変える合図かもしれない

危険や他害につながる行動は、まず止めます。本人と周囲の安全を確保し、守るべきルールや境界を伝えることも欠かせません。

ただし、止めることと、次にできるよう教えることは別です。

同じ注意を何度も繰り返しても変化がないときは、「分かっているのにやらない」と決める前に、次の5つを確認してみてください。

  • 行動が大きくなる前に、どのような変化があったか
  • してほしい行動まで具体的に伝えているか
  • 言葉だけでなく、実際に見せて練習しているか
  • できている部分や努力を具体的に返しているか
  • 本人が守りやすい環境やルールになっているか

注意を強くすることよりも、子どもが「次はどうすればよいか」を分かり、実際にできる条件をつくること。

私たち大人が見方や伝え方を少し変えることで、子どもが選べる行動も広がることがあります。

「この子は、どこまではできているのだろう?」

「どんな伝え方なら、分かりやすいだろう?」

「どんな環境なら、うまくいくだろう?」

そんなふうに、子どもの姿から次の一手を一緒に考えていけるとよいですね♪

行動の見立てを、次の支援につなげたい方へ

「困った行動」と決めつける前に、起きた事実と解釈を分け、次に試す支援へつなげるための行動の見立て実践セットを無料でご用意しています。

  • 見るポイントが分かる使い方ミニガイド
  • 架空事例を使った記入例
  • 家庭・記録・ケース会議・研修で使える空欄シート

公式LINEの友だち追加後、受け取りフォームをご案内します。発達支援のワンポイントや無料講座の情報もお届けしています。


参考にした資料

※上記資料は主に学校場面を対象としたものです。本文の実践例は、ゆうた先生が支援現場で経験した場面を一般化して記載しています。個々の子どもへの支援は、年齢、発達、本人の意思、健康状態、行動が起きる状況などを確認しながら調整する必要があります。

遊びで声や動きが大きくなる子に、支援者が適切な関わり方を実演する様子

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この記事を書いた人

ゆうた先生のアバター ゆうた先生 株式会社THE SHIP代表取締役/元特別支援学校教諭

株式会社THE SHIP代表取締役。東京学芸大学大学院教育学研究科特別支援教育専攻修了。元特別支援学校教諭。現在は山梨県で、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援を運営しています。子どもの行動の背景を丁寧に捉え、家庭や支援現場で実践できる発達支援・特別支援教育の情報を発信しています。

目次