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ゆうた先生
元特別支援学校教諭/株式会社THE SHIP代表
東京学芸大学大学院 教育学研究科 特別支援教育専攻修了。

特別支援教育・発達支援の現場で、子ども一人ひとりの発達段階や特性に合わせた支援に取り組んできました。

現在は、山梨県で児童発達支援・放課後等デイサービス「SHIP」を運営しています。

子どもを「できない子」として見るのではなく、「これから学び、できることを身につけていく子」として捉え、その子にとって今ちょうどいい関わり方を考えることを大切にしています。

ABA、行動理解、視覚支援、環境調整、保護者支援などを、現場や家庭で使える形にして発信しています。
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園・学校では頑張れるのに、家で崩れるのはなぜ?|子どもの姿が環境で変わる理由

園では頑張れるのに、家で崩れるのはなぜ? 園と家庭の建物を線でつないだイラスト
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「園では問題ありません」と言われる。友達と遊び、活動にも参加できている。それなのに、家に帰ると怒る、泣く、着替えようとしても動けなくなる。

園で楽しく過ごせていることは、うれしい情報です。一方で、毎日の帰宅後に対応している保護者にとっては、「家での大変さが伝わらない」と感じることもあるでしょう。

「外でできるなら、家でもできるはず」。そう考えたくなりますが、子どもの行動は、持っている力だけで決まるものではありません。求められることや周囲の刺激、人との関係、その日の体調など、環境との相互作用で変わります。

場所によって姿が違うこと自体が、子どもを理解するための大切な情報になります。誰かの関わり方を評価する前に、その違いの中身を見ていきましょう。

目次

園・学校では、思っている以上に頑張っていることがある

朝の支度をして、集団に入り、先生の話を聞く。使いたい物があっても順番を待ち、友達との距離を調整する。遊びたい気持ちをいったん止めて、予定に合わせて動く。

園や学校の一日には、こうした小さな調整がいくつもあります。苦手な活動に参加することや、声や物音の多い部屋で過ごすことに、力を使っている子もいます。

一つひとつはできていても、積み重なると負荷になる場合があります。大人から見える「できた」という結果と、本人がそのために使った力は、必ずしも同じようには見えません。

ただし、集団で過ごすことがいつも苦痛とは限りません。友達と遊ぶ楽しさや達成感を感じながら、同時に疲れていることもあります。できている姿を認めつつ、休憩の取り方や、活動後の様子も合わせて見たいところです。

「外でできる=いつでもできる」とは限らない

たとえば、園では片づけの写真を見て、友達と一緒に玩具を箱へ戻せる。家庭では、遊びの途中で「そろそろ片づけて」と言われても動き出せない。

どちらも「片づけ」ですが、手がかりは違います。何を、どこまで、いつ終えるのかが見えているか。見本になる人がいるか。その後に何をするかが分かっているか。こうした条件で取り組みやすさは変わります。

一つの場面で身につけた行動が、別の場面でも使えるようになることを「般化」といいます。それは自動的に起こるとは限らず、別の場所でも分かる手がかりや、練習の機会が必要なことがあります。

「できる力があるか」に加えて、「どんな条件なら、その力を使えるか」を見る。この視点があると、「家ではやる気がない」という判断から、支援の工夫へ話を進められます。

家で崩れるときに考えたい背景

ここでいう「崩れる」は、帰宅後に怒る、泣く、動けなくなるなどの様子を表す言葉です。診断名ではなく、背景も一つではありません。

疲労

走ったり歩いたりした身体の疲れだけでなく、説明を理解し、手順を覚え、気持ちを切り替える認知的な疲れも考えます。友達の反応を気にしたり、相手に合わせたりする対人的な疲れもあるでしょう。

「今日は座っていただけ」でも、本人には負担が大きかったかもしれません。帰宅後すぐに次の活動を求める前に、休める余地があるかを確認します。

刺激

教室の話し声、椅子を引く音、人の多さ、活動の多さ。刺激の受け取り方には個人差があります。帰宅後もテレビやきょうだいの声が重なると、落ち着くまでに時間がかかることがあります。

静かな場所を好む子もいれば、体を動かす方が過ごしやすい子もいます。「静かに座る」を全員の休息の形にせず、本人が楽になる過ごし方を探します。

安心感

安心できる場所で緊張が緩み、抑えていた気持ちや疲れが表に出る可能性はあります。ただ、「家で崩れるのは安心している証拠」とは言い切れません。

その説明だけで終えると、痛み、不安、要求の難しさなどを見落とすことがあります。安心感は背景の候補の一つとして、ほかの条件と合わせて考えます。

見通しや要求

園・学校では時間割や毎日の流れが分かりやすく、家庭ではその日によって予定が変わることがあります。反対に、家庭の方が見通しを持ちやすい子もいます。

「着替えて、手を洗って、宿題も出して」と要求が続くと、何から始めるか分からなくなることも。一つずつ伝える、最初にすることを見せる、始める時刻を一緒に決めるなど、要求の量と伝え方を調整します。

人との関係性

同じ言葉でも、誰から言われるかで反応が変わる場合があります。その人の伝え方に慣れているか、困ったときに助けてもらえる見通しがあるか、これまでどんなやり取りを重ねてきたかも関係します。

「この先生なら動ける」を、ほかの大人の力量不足と結びつけないこと。その先生が待つ時間や、声をかける距離など、具体的な関わりを共有してみます。

発達・感覚・コミュニケーション

予定を頭の中に置いておく、言葉から状況を理解する、自分の不快感に気づいて伝える。こうした力の育ち方や感覚特性によっても、必要な支援は違います。

発達障害のある子どもの相談で「家で荒れる」という言葉が出ることはありますが、家庭と学校の様子の違いだけで、発達障害の有無や原因は判断できません。「休みたい」「分からない」を言葉以外でも伝えられるか、課題や刺激が本人に合っているかを見ます。

自閉スペクトラム症の子どもの支援を扱うNICEのガイドラインでも、行動の背景として、コミュニケーション、身体の不調、感覚的・社会的な環境、予定の変化などを確認することが勧められています。疲労や安心だけで説明しないための参考になります。参考:NICE CG170、1.4.1

「園ではできています」で終わらせない

園でうまくいっているなら、次に考えたいのは「なぜ園ではできているのか?」です。

予定が視覚的に分かる。始まりと終わりが明確。先生の伝え方が具体的。周囲の子どもを見て動ける。本人が成功しやすい課題になっている。先生にとって普段の工夫が、子どもの力を支えているかもしれません。

「園では一人でできます」から、「片づける物の写真を見せて、最初の一つを一緒に入れると、その後は自分で続けています」へ。ここまで共有できると、家庭でも試せる方法が見えてきます。

家庭で園の仕組みをすべて再現する必要はありません。「しまう場所に同じ写真を一枚貼る」など、生活の中で続けられる部分を一つ取り入れ、本人の反応を見ながら調整します。

家庭で難しくなるときも「条件」を見る

帰宅時間やその日の活動量、睡眠、食事のタイミング、帰宅前の出来事。宿題などの要求、きょうだいとのやり取り、予定変更、本人が休める時間。家庭には家庭の条件があります。

毎日のすべてを詳しく記録する必要はありません。まずは難しくなる場面と、比較的穏やかに過ごせた場面を一つずつ比べてみます。

たとえば、帰宅直後に宿題を促した日は泣いていたが、好きな本を見てから始めた日は取りかかれたとします。これは支援を考えるための仮の例です。この違いから「休む時間が役立つかもしれない」と考えられますが、一度だけで原因は決まりません。睡眠や宿題の難しさも確かめながら試します。

家庭の条件を見るのは、保護者の育て方を採点するためではありません。夕方は大人にも用事が重なる時間です。家庭だけに調整を任せず、学校で宿題の量を相談する、放課後の予定を見直すなど、関係者で分担して考えます。

家庭と園・学校で共有したい5つの情報

「できた/できなかった」に、次の情報を少し添えると、子どもの姿を具体的に話し合いやすくなります。

  1. 何が起きたか
    「荒れた」だけでなく、「着替えの声かけの後に泣き、床に座った」など、見聞きした行動を伝えます。うまくいった姿も一緒に残します。
  2. その前に何があったか
    活動の終了、待つ時間、友達とのやり取り、予定変更など。直前だけでなく、その日の流れにも目を向けます。
  3. どのような環境だったか
    場所、時間、誰がいたか、音や人の多さ、求めた内容、手がかりの有無を共有します。
  4. どんな関わりでうまくいったか
    声をかけずに待った、選択肢を示した、最初だけ手伝ったなど、関わった後の変化まで伝えます。
  5. 疲労・睡眠・体調等
    睡眠や食事、活動量、痛みなど気になる様子を、分かる範囲で共有します。「疲れていると思う」は解釈として、観察事実と分けます。

共有する相手と目的を決め、支援に必要な情報に絞りましょう。本人の話を聞く場合も、落ち着いた時間に短く尋ねたり、指さしで選べるようにしたりと、答えやすさを大切にします。

場所によって姿が違うことは、支援のヒントになる

「家庭と学校の、どちらが本当の姿なのか」。意見が食い違うと、答えを一つにしたくなるかもしれません。

でも、友達に合わせて活動している姿も、帰宅後に動けなくなる姿も、その子の姿です。家庭で好きなことを詳しく話す姿も、教室で言葉が出にくい姿も、どちらかを否定する必要はありません。

複数の場面を合わせて見ることで、子どもの理解は立体的になります。学校からは、力を使える手がかりが分かる。家庭からは、一日の負担や、本人が好む休み方が分かる。違いがあるからこそ、見えることがあります。

就学前児を対象とした研究でも、保護者と教師の評価の違いは、場面による行動の違いと関連していました。すべての違いを同じ理由で説明する研究ではありませんが、報告の不一致を単なる誤りとして扱わない視点を支えています。参考:De Los Reyesら(2009)

ただし、「どちらもその子の姿」と認めるだけで、本人や家族のつらさをそのままにしないことも大切です。園でできていても、家庭で生活が回らないほど難しければ、支援を考える理由になります。

次の話し合いでは、「どちらの見方が正しいか」よりも、「共通して使えそうな手がかりは何か」「負担を減らすならどこか」を一つ決めてみてください。本人の参加しやすさと、活動後の過ごしやすさの両方を確かめます。

まとめ

子どもの行動には理由があります。ただし、その理由を大人がすぐに一つに決められるわけではありません。

いつ、どこで、誰と、何をしているときに起きたのか。その前後に何があったのか。行動の周りに目を向けることで、支援のヒントは増えていきます。

「園ではできるのに家ではできない」という違いを、誰かを責める材料にしない。うまくいく条件を持ち寄り、難しくなる条件を一緒に調整する。その積み重ねが、子どもの力を日々の生活で使いやすくしていきます。

急な様子の変化や痛み、眠れない状態などが続く場合は、環境だけで説明せず、かかりつけ医などにも相談してください。

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園では頑張れるのに、家で崩れるのはなぜ? 園と家庭の建物を線でつないだイラスト

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この記事を書いた人

ゆうた先生のアバター ゆうた先生 株式会社THE SHIP代表取締役/元特別支援学校教諭

株式会社THE SHIP代表取締役。東京学芸大学大学院教育学研究科特別支援教育専攻修了。元特別支援学校教諭。現在は山梨県で、児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援を運営しています。子どもの行動の背景を丁寧に捉え、家庭や支援現場で実践できる発達支援・特別支援教育の情報を発信しています。

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