「自分でできるようになってほしい」
子どもの成長について考えるとき、保護者や先生、支援者からよく聞かれる願いの一つです。
着替えができるようになる。自分の持ち物を片付けられるようになる。一人で課題に取り組めるようになる。
もちろん、できることが増えていくのは大切な成長です。
しかし、私は、自立とは単に「何でも一人でできるようになること」だけではないと考えています。
例えば、何か困ったときに、自分で考えて解決する方法を探せること。
どうしても難しいときには、誰かに助けを求められること。
自分がどうしたいのかを考え、選んで行動できること。
こうした力も、自立にとって大切ではないでしょうか。
今回は、発達支援や特別支援教育の場面で考えたい「自立」について、私が大切にしている3つの視点からお伝えします。
1.自立とは、自分で考えて行動できること
私が自立を考えるとき、まず大切にしたいのは、自分で考え、どうしたらよいかを判断して行動する力です。
例えば、活動の準備をする場面を考えてみましょう。
先生が「次はこれを出して」「ここに置いて」「次は座って」と毎回指示すれば、子どもは活動に参加できるかもしれません。
しかし、指示がないと何をすればよいか分からなくなる状態では、まだ援助を必要としている部分があると言えます。
ここで考えたいのは、どうすれば子ども自身が次の行動を考えられるようになるかということです。
例えば、活動の流れが分かる写真を用意する。
使う道具を自分で確認できるようにする。
次に何をするか、本人に選んでもらう。
こうした環境を整えることで、毎回大人が言葉で指示しなくても、子どもが自分で確認して行動する機会をつくれます。
大切なのは、大人の指示をなくすこと自体ではありません。
子どもが自分で分かり、考え、行動できる条件を増やしていくことです。
2.助けを求められることも、自立の一部
「自立している人」と聞くと、何でも一人で解決できる人を想像するかもしれません。
しかし、私たち大人も、すべてのことを一人で行っているわけではありません。
分からないことがあれば人に聞きますし、難しい仕事は誰かと協力します。
子どもも同じです。
困ったときに「手伝って」と伝えられること。
分からないときに「教えて」と聞けること。
自分にとって難しいことを理解し、周囲の力を借りながら進められること。
私は、こうした力も自立の一部だと考えています。
例えば、子どもが容器のふたを開けようとしている場面を想像してみてください。
一生懸命試しているものの、なかなか開きません。
そのとき、必ず一人で開けられるまで頑張らなければならないのでしょうか。
自分で試した後に「開けて」と頼むことも、必要な力ではないでしょうか。
もちろん、援助を求める方法は、言葉だけとは限りません。
指さし、身振り、絵カード、身近なコミュニケーション手段など、その子に合った方法で伝えられることが大切です。
そして、大人がその発信に気づき、適切に応じることも必要です。
「助けて」と伝えられるようにするには、助けを求めたときに受け止めてもらえる関係も大切です。
詳しくは、関連記事「子どもが『困った』と言えないときに|助けを求められる関係を育てる4ステップ」でも解説しています。
3.生活の中でできることを増やしていく
自立を考えるうえでは、身の回りのことを自分でできるようになることも大切です。
例えば、
- 自分の服を選んだり、着替えたりする
- 食具を使って食事をする
- 持ち物を準備する
- 使った物を片付ける
- 困ったときに必要な物を探す
こうした日常生活の力は、子どもの生活を支える大切な力です。
ただし、「自分でできた」という結果だけを見ていては、十分ではありません。
どこまでなら一人でできるのか。
どの部分で手が止まるのか。
少し手伝えばできるのか。
道具や環境を変えればできるのか。
私は、そこまで具体的に見ていくことが支援者に必要だと考えています。
4.大人はどこまで手伝えばよいのか
支援の現場で難しいのが、援助の量を調整することです。
手伝いすぎれば、自分で考えたり試したりする機会が少なくなるかもしれません。
一方で、援助が少なすぎると、取り組み始めることすら難しくなり、負担が大きくなることもあります。
私は、子どもの発達の最近接領域を考えながら、少しの支援で取り組めそうなところを見極めることを大切にしています。
例えば、洋服を畳むことが難しい子どもがいたとします。
これは説明のための架空の場面です。
全部を大人が畳むのではなく、最初に袖の部分だけ一緒に折って、残りは本人が取り組めるかもしれません。
あるいは、畳む位置が分かるように目印をつける方法も考えられます。
ただし、どの方法が合っているかは、実際に取り組む子どもの様子を見なければ分かりません。
援助を減らすことそのものを目的にするのではなく、必要な援助を見極めることが大切です。
5.「できた・できない」だけで評価しない
子どもの成長を振り返るとき、「できました」「できませんでした」という結果を記録することがあります。
もちろん、それも必要な情報です。
しかし、それだけでは、次にどのような支援をすればよいか分からないことがあります。
例えば、次のような視点で見ると、子どもの姿をより具体的に理解できます。
- どの場面なら自分で行動できたか
- どの程度の援助が必要だったか
- 自分で考える時間があったか
- 困ったときに助けを求められたか
- どのような環境や道具が役立ったか
- 前回と比べて、取り組み方にどのような変化があったか
たとえ最後まで一人でできなかったとしても、自分で方法を考えたり、援助を求めたりする姿が見られるかもしれません。
私は、そうした小さな変化にも目を向けたいと考えています。
6.自立を急がせず、自分で考えられる機会をつくる
子どもの将来を考えると、早く一人でできるようになってほしいと思うこともあります。
しかし、急いでできるようにすることと、子ども自身が力を身につけていくことは、必ずしも同じではありません。
私は、子どもが自分で考え、試行錯誤する経験を大切にしたいと思っています。
どうすればうまくできるかを考える。
試してみる。
難しければ、別の方法を考える。
必要なら助けを求める。
そして、少しずつできることを増やしていく。
その過程で「自分で考えてできた」「困ったときに助けてもらえた」という経験が積み重なっていくことにも意味があると考えています。
もちろん、いつも一人で考えさせたり、困っていても待ち続けたりすればよいわけではありません。
その子の発達や体調、活動の負担、安全面を踏まえて、必要な援助を行います。
まとめ|自立は、一人で頑張り続けることではない
私は、子どもの自立について、次の3つを大切に考えています。
- 自分で考えて、判断し、行動できること。
- 必要なときに周囲へ助けを求められること。
- 生活の中で、自分でできることを少しずつ増やしていくこと。
何でも一人でできるようになることだけが、自立ではありません。
自分で考えることも、人に頼ることも、生活の力を身につけていくことも、どれも大切な成長です。
ゆうた先生子どもが将来、自分らしく生活していくために、今どのような力を育てていく必要があるのか。
そのことを考えながら、一人ひとりの発達に合った支援をしていきたいですね。
関連記事
子どもが「困った」と言えないときに|助けを求められる関係を育てる4ステップ
この記事について
本記事は土屋勇太(ゆうた先生)の自立観・発達支援に関する発言を基に編集した解説です。生活場面の例は説明用であり、実在の児童の支援事例や成果を示すものではありません。

